もう振り回されない! 「虚構新聞」らに学ぶ“デマ”との付き合い方個人サイト管理人の「目」(1/4 ページ)

Twitterでしょっちゅう飛び交う“デマ”情報。このデマに振り回されない処世術は無いのだろうか。また、そもそもデマとは何か、“デマ”と“ネタ”の境界線はどこにあるのかなどを、「虚構新聞」など人気個人サイト運営者に聞いた。

» 2013年02月04日 11時45分 公開
[村上万純,Business Media 誠]

 ネットは匿名性が高いため、ほかのメディアに比べて情報の信ぴょう性が低くなりがちだ。特にTwitterは、即時で情報を共有できる特性ゆえ、真偽を確かめる間もなく情報を拡散されてしまう傾向がある。そのため、いわゆる“デマ”情報が広まりやすい。最近でいえば、東日本大震災の際に、たくさんのデマが出回り、多くの人の混乱を招いていた。

 これまでは、炎上対策(第1回第2回)やネットで人気を得る方法(第3回)など、情報発信者側の視点でネットを解説してきたが、今回は受信者側に視点を移し、“デマ”との付き合い方に着目する。引き続き、ネット黎明期から約10年以上個人サイトを運営する“ネットのベテラン”、「虚構新聞」(2004年〜)のUK氏、「絵文録ことのは」(2003年〜)の松永英明氏、「まなめはうす」(1996年〜)のまなめ氏、「ー`)<淡々と更新し続けるぞ雑記。ωもみゅもみゅ」(2000年〜)のさらしる氏の知見に学んでいこう。

楽しいのが“ネタ”、楽しくないのが“デマ”

画像 ネタで書かれた「橋下市長、市内の小中学生にツイッターを義務化」の記事は、3日間で合計16万件ものアクセスを記録した。Twitter上には異例の「お詫び」を掲載

 “デマ”を定義するのは難しい。冗談で発せられた“ネタ”との境が曖昧なのもその理由の1つ。

 例えば「虚構新聞」が掲載した「橋下市長、市内の小中学生にツイッターを義務化」の記事。本当の情報と誤認してSNSで拡散する人が多く、結果的にネットで混乱を招いたデマとして扱われた。

 デマかネタかは、時間の経過や状況によって変わってしまうのだ。

 そんなデマを個人サイト運営者はどう定義しているのだろうか。また、デマとネタの境界線をどこに引いているのだろうか。ネットに遍在する、真偽不明な不確定情報へのスタンスを聞いてみた。

松永 デマとネタを区別する基準は、人を傷つける意図があるかどうかですね。例えば、Wikipediaのパロディサイト「アンサイクロペディア」はデマではなく、良質なネタサイトだと思います。なぜなら、ただひたすらにふざけているだけで、誰かを傷つけるような情報が載っていないからです。

 デマと、単なるニュース記事の誤報とを区別するのは簡単です。デマの難しい点は、しばしば善意で伝えられるので、情報の真偽を問いづらいところにあります。例えば「ある有名人が実は裏でひどいことをしていた」とか、特定の人の評判を下げるような悪意のあるデマ情報を、「この情報はみんなに知られるべき」という正義感で、情報源をきちんと調べる前に勢いで伝えてしまうことってありますよね。そしてその情報は、同じような正義感を持つ人によってどんどん拡散されてしまう。押し付けの正義感は、デマさえも安易に振りかざしてしまう。それってすごく怖いことだと思います。

画像 絵文録ことのは」では震災時に飛び交っていた様々な種類の“デマ”が分類整理されている

さらしる 単純に、楽しいものがネタで、楽しくないものがデマだと思います。私自身、あるアニメが実写化や劇場版化するといった嘘の情報によく騙されてしまうんですが、それが手間暇のかかった画像が添付されていたりと、よくできたネタなんですよね(笑)。そうなると、気付いたときに「なんだ、嘘だったのか」と笑えますし、そういうものを私はデマだと思いません。

画像 関西出身のUK氏は「オチや笑いには人一倍気を使っている」という

UK デマは人を楽しませようとしてないですよね。だから、最後まで読んでもオチがないですし、時には人の不安を煽ることもあります。「虚構新聞」の記事はたまにすべることもありますけど(笑)、オチや笑いどころはかなり意識して入れています。Twitterの公式アカウントで発信することで、うちの記事であることも明確に表明しています。なので、デマではなく、ネタを流しているという意識は強く持っています。


 松永氏とUK氏は、他人を傷つけたり、人の不安を煽るような意図がその背景にあるかどうかを、デマの判断基準の1つとしていた。さらしる氏は「楽しいかどうか」を判断基準にしていたが、うまくオチをつけて笑いに昇華できるかどうかにデマとネタの境がありそうだ。ただ、今回挙げられたデマかどうかの基準は、あくまで主観的な判断によってしまうため、初心者には少し難しいかもしれない。また松永氏はデマ情報の拡散の背景に、人の善意があると分析していたが、自分で情報を発信する際には、真偽を確かめずに勢いだけでシェアしていないか、十分に気をつけたいところだ。

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