個人的な話をすると、筆者が経営している会社は「機械損失を最小限にする」コンセプトのもと、さまざまなオンラインマーケティングの支援ツールを開発しています。
マーケティングに明るい人なら誰でも知っているように、一般的なWebサイトでは、訪れたユーザーのうち1%程度しか、購入、申し込み、問い合わせなどの成果につながりません。リアル店舗と違い、オンラインではショッピングカートに商品を入れたからといって必ずユーザーが買ってくれるわけではありません。
例えば、100人の訪問者中1人が買ってくれるネットショップがあれば、逆に言うと99人は何らかの理由で買わないということになります。この「買わない理由」を分析して、その問題を解決できるようなソリューションを提供すれば、Webサイトを途中で離脱していたユーザーを購入者に転換(コンバージョン)できることになります。
私の会社でやっているEFO(入力フォーム最適化)は、ネットショッピングの顧客がカートに商品を入れたまま、何らかの理由で離脱してしまう「カート落ち」と呼ばれる「機会損失」を利益に変えられるサービスです。
100人集客するための広告費が100万円であれば、1人当たり1万円のコストが掛かっているわけです。しかも、その99%はロスになる! 機会損失とは言い換えれば「宝の山」です。
機会損失に着目すると、コスト削減だけでなく、大きな販売機会の拡大につながります。例えば、1つの製品しか案内しない営業員がほかの部署の製品の説明ができるようになれば、1回の訪問でさらに利益を伸ばせるでしょう(アドセルと呼ばれる販売手法です)。
また、2つの異なる事業部でお互いの顧客に対して相手方の製品を案内できれば、販売機会が格段に増えます(クロスセルと呼ばれる販売手法です)。
コストや利益の分析を行う場合は、単純にその活動によって生まれるコストや利益だけを算出してはいけません(ヤマト運輸であれば、時間指定による出動コストだけを計算すること)。その活動によって生じる作用、副作用を洗い出し、全体としての総コスト、全体としての総利益に換算できなければ、正しい判断はできないのです。
ビジネスクリエイティビティを発揮する際には、常に木と森の両方を見る目を養う必要があります。
なお本連載の基となった『トップ1%の人だけが実践している思考の法則』(永田豊志著、かんき出版刊)では、5Aサイクルの具体例として、グーグルのほか、ダイソン、アマゾンなど今をときめくイノベーティブな企業群のエピソードを18のケースストーリーで紹介しています。
本連載は2012年12月19日に発売した『トップ1%の人だけが実践している思考の法則』(永田豊志著、かんき出版刊)から一部抜粋しています。
本書は、イノベーションを起こして、ビジネスで勝ち残るための「思考法則」についての解説書です。これからの働き方は、大きく変わります。今まで通りに目の前にある仕事を頑張って働くのではなく、新しいイノベーションを起こしてソリュ―ション(問題解決)することが不可欠になります。本書はあなたの仕事にイノベーションを起こすために、トップ1%のできるビジネスマンだけが実践している「思考の法則」を著者、永田豊志氏が見つけ、分かりやすくまとめたものです。
「営業」「企画」「経理」「総務」「財務」「マーケティング」――など、あなたが何を専門に従事しているかはまったく関係ありません。すべてのビジネスパーソンに必要な「思考」だからです。ぜひ、本書を読んで、変化の激しい時代に、あなたがたくましく生き残れるよう役立ててください。
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
ビジネスマンの「知的生産性の向上」をテーマに精力的に執筆・講演活動も行っている。近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』『ノート・手帳・メモが変わる絵文字の技術』(中経出版刊)、『すべての勉強は、「図」でうまくいく』(三笠書房刊)がある。
連絡先: nagata@showcase-tv.com
Webサイト: www.showcase-tv.com
Twitterアカウント:@nagatameister
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.