先ほどの意訳の部分を再掲する。
「仕事がはかどること、手ぎわがいいこと、どんなささいなことにも心が行きとどいていること、ツールや人の効用や適性を知ること、(部下や参加者の)それぞれのやる気のレベルを見極めること、モチベーションを高めること、無理や限界をわきまえること、何がリーダーの心得るべきことである」
リーダーは「統領」の訳だが、これを「ファシリテーター」に置き換えても、そのまま意味が通じる。私はそのことに驚いた。
ファシリテーションについて考えていたら、この一節が目にとまった。できすぎた話だが、人間あることに一生懸命になると、答えが向こうからやってくるということがよくある。その一例だろう。
ちょっとまとめ直してみよう。
◆目標・ゴールを共有する
◇進ちょく(タイムマネジメント)について常に気を配る
◇手際よく進める(そのやり方を知っていて、身に付けている)
◇ささいなことに目配りができている(参加者の様子をよく観察している)
◇ツール類に精通し、目的に応じて使い分ける
◇参加者の能力や性格を見抜き、上手に役割を振る
◇参加者のやる気の状態を観察し、やる気のない人がでないようにする
◇参加者全体のモチベーションを高める工夫をする
◇無理なことをしない
◆は私が付け加えた。ファシリテーションスキルを身に付けようと思う人は、以上を印刷して、常に心掛けるといいだろう。
この「ファシリテーターの心得」は、参加者をメンバーに置き換えたら、そのまま「リーダーの心得」に早変わりする(当然だが)。
私は会社員時代ダメなリーダーだったと思うが、当時はファシリテーションという言葉は知っていても、何だか流行を追いかけるようなのがいやで避けていた。
今になって思えば、あのころにファシリテーションのスキルがあったら、もう少しマシなリーダーになれたように思う。
当時は、ファシリテーション=会議術という誤解もあった。そうではなく、メンバーからアイデアとやる気と納得を引き出すスキルなのだ。であれば、リーダーのやっていることは日々ファシリテーションということになる。
ファシリテーションこそ現代のリーダーに求められるスキルだとよく言われるが、まさにこれがその理由なのである。
こういうことを、『五輪書』を読んで初めて理解した。日本の古典は豊穣である。
※この記事は、誠ブログの「本当にそうなのか?:ファシリテーションとリーダーシップと宮本武蔵」より転載、編集しています。
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