しかしながら、講演会にご参加いただいた方の質問のように、PMP法は改善点を肯定的に伝えることができるものの、改善点よりも、褒められた印象のほうが残ってしまい、本意が伝わっていないということもあるかもしれません。この場合、伝えた側には「本当に伝わったのかな」と不安に思うこともあるでしょう。
私の意見では、コミュニケーションとはこちらが何を「伝えたか」よりも、相手にどのように「伝わったか」がすべてだと考えています。こちらが改善点を伝えたつもりでも、相手の表情がニコニコしていて、なにかうれしそうだったとしたら、改善点としてではなく、褒められたという印象で伝わっているのでしょう。
少し話はずれてしまうのですが、自分の意見が相手に伝わらないとき、「何で分からないの?」「この間も言ったよね? 何度言ったら分かるの?」と、相手を責め立てたくなるときがあります。何度言っても伝わらないとき、私もそう思うときがよくあります。けれども、結果的にはこちらが何を「伝えたか」よりも、相手にどう「伝わったか」がすべてなのです。
さて、冒頭の講演先での質問の話に戻りますが、私は次のように答えました。
「確かに、こちらの意図したメッセージが相手に伝わらないことがよくありますね。私の意見では、“こちらが何を伝えたかよりも、相手にどう伝わったかがすべて”だと思います。もし相手に“違う意味で伝わったかな?”と思ったならば、不安なままでいるよりも相手の方にどのように伝わっているか、確認してみるのはどうでしょうか?」
「相手に確認する」と言っても、何も難しい話はありません。「あれ? ちょっと違う意味で伝わったかな?」と思ったら、どう伝わっているか確認してみるのです。
例えば「今日の話、どう思った?」「今日の話で、もっとも大切なことは何だろう?」「今日の話を踏まえて、これからどうする?」のように。
また「今日は○○の改善点について伝えたかったんだけど、何か、伝わっていないような気もする。どう伝わったかな?」と、ご自身がお感じになったことをそのまま伝えるのもいい方法です。
例えば、前出の、「スタッフから提出された書類の要点がまとまっていないとき」の例なら、どのように確認すればいいでしょうか。先に紹介したPMP法で改善点を伝えた後に「私は△△を○○にしてまとめると、もっとよくなるんじゃないかと思うけど、○○さんはどんな風に考える?」とアイデアを確認してもいいでしょうし、もっとシンプルに「どう思った?」「どう? できそう?」となどのように確認するのもいいでしょう。
大切なのは言い方よりも、どう伝わったかどうかを確認することです。職場のコミュニケーションのギャップは、ちょっとした「言ったはず」「伝わったはず」から始まります。確認することで、こちらの思いが相手に伝わったことが分かり、意思疎通が確実になるでしょう。
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