ダイソン“羽根のない扇風機”、開発原動力は「利用者の怒り」だったトップ1%の人だけが実践している思考の法則(2/3 ページ)

» 2013年02月19日 10時50分 公開
[永田豊志,Business Media 誠]

ダイソンの家電開発の原動力は「利用者の怒り」

 そのジェームズ・ダイソン氏は、成熟化した家電領域の中でいつも新しい革新的な製品を提供できる原動力は「利用者の怒り」だといっています。普段の生活の中で私たちが、うまくいかない事柄に対して、怒りを持つ。そして、それを解決するのが製品開発の原動力だと考えているのです。最初のサイクロン方式の掃除機も「紙パック交換が面倒だし、経済的でない」という不満から出発しています。

 羽根のない扇風機が単にデザインの奇抜さだけでなく、市場に受け入れられたのも日常的な不満の解消があったからに違いありません。扇風機はあまりにも長い間、技術革新が起こってきませんでした。しかし、昔から「怒り」はあったはずですね。

 例えば羽根が回ることで、子どもが手を入れたら危ないとか、羽根やそれを覆うカバーの部分の掃除が大変だとか。あるいは、羽根を回すモーターが重いため、それとバランスを取る台座も重くせざるを得ない。よって、単純な構造の割に重量が大きいのもネックでした。

 ダイソンのエアマルチプライアーは、それらの不満を解消した画期的な製品となりました。あなたがビジネスクリエイターであれば、こうした日常的な怒りを見逃さないようにしたいものです。

軍事技術がお掃除に生かされる時代

 ところで、筆者も数年前に国産メーカーの掃除機が壊れて、新しいものを探しました。その時に迷ったのがダイソンのサイクロン掃除機とお掃除ロボットのルンバです。部屋の形状などを考慮して、ルンバは結局あきらめましたが、自走式で掃除をしてくれて自ら充電に戻る姿に愛らしささえ感じたものです。

 ルンバを製造する米国のアイロボットは、その名の通り、家電メーカーではなく、ロボットを作る企業です。マサチューセッツ工科大学で最先端の人工知能を研究していた3人の科学者、ロドニー・ブルックス氏、ヘレン・グレイナー氏、そして現CEOコリン・アングル氏が1990年に設立したロボット専業メーカーなのです。

 同社は「Dull(退屈)、Dirty(不衛生)、Dangerous(危険)な仕事から人々を解放する」理念のもとに、これまで多くのロボットを開発してきました。

 例えば、軍事用ロボット。人間に代わり、土の中に埋められた地雷を発見する爆弾処理ロボットを米国政府が大量購入したのが同社発展のきっかけとなりました。ルンバの、ゴミの多さを分析するセンサーもこの軍事技術を掃除に応用したものです。

 アイロボット社はそのほかにも、人命救助、海洋探査、ピラミッドの発掘調査など、米国の国家プロジェクトを始め世界中で活躍するロボットを開発しています。1997年にはNASAの依頼で火星探査ロボットも設計して表彰されましたし、日本では東日本大震災にともなう福島第一原子力発電所の事故のときに、同社のロボットが使われたことがニュースで取り上げられました。

 つまり、お掃除ロボットは、そうしたロボット技術、人工知能の「掃除への応用」だったわけです。

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