そんな中、貧困層を対象にした「マイクロファイナンス」と呼ばれる低金利の無担保融資を行っている銀行があります。それがバングラデシュのグラミン銀行です。
グラミン銀行は、バングラデシュの農村部の貧困を救済する政府プロジェクトとして、ムハマド・ユヌス氏が初代総裁に就任しスタートしました。最初の融資は42の貧困家族に27ドルという、実に小さな規模でした。
そのシステムはまたたく間にバングラデシュ全土に浸透し、世界40カ国以上に広がりました。彼らは2015年までに世界の貧困層を半減させる目標を掲げ、融資業務を拡大しています。グラミン銀行と創業者のムハマド・ユヌス氏はこの功績によりノーベル平和賞を受賞しました。
ところで、このマイクロファイナンスをビジネスとして見たときに注目すべきポイントは「意外に貸し倒れリスクは少ない」ことです。
実は切実なニーズを満たしてもらった恩を仇で返す顧客はまれなのです。貧困層=リスクが高い、金持ち=リスクが低いと考えるのはステレオタイプな発想です。
本当にリスクが高いのは、融資の審査がいい加減になって相手方のことをよく調べもせずに湯水のようにジャブジャブお金を貸し付けることです。
「本当に必要としている人たち」は非常にまじめで、せっせとローンを返済します。私たちのイメージよりもはるかに優良な借り手なのです。
それどころか、この融資によって銀行の会員5000万人の半数が学校に行ける。かつ、安全な水と食料を口にできるようになったのですから、ビジネスを通じてバングラディッシュの発展にも寄与しているのです。
もちろんこのマイクロファイナンスが万能で、魔法のつえというわけではありません。このシステムを悪用して貧民層に高利貸しをした悪質な企業もありますから。当然ながらどんなシステムでもよい面ばかりではありません。
それでも、あなたに知っておいてもらいたい重要なことは「持続可能なビジネスはWin-Winでなければならない」ということです。
「そんなの理想だよ」「絵に描いたもち」「仕事はクライアントとのだまし合い」と冷やかす人もいるでしょう。なるべく手間が掛からない楽な案件を高額で受注し、いかに安い賃金で丸投げするかを考えている人にとっては、Win-Winは絵空事に見えるかもしれません。
しかし、誰かの犠牲の上に成り立つビジネスは絶対に長続きしません。それを支援したいという投資家も現れません。どんなビジネスであっても顧客のニーズを満たし、創意工夫によって顧客の期待を上回る価値を提供する。それによって利益を伸ばす。それが商売の原理というものです。
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