「センター」の設置は無理でも「餌付け」自体はいつでも簡単にできる。私がライフワークとして取り組んでいる企業支援の一環で、OJT担当者向けに研修をしている。新入社員のOJT担当になった人たちには「新人と関係構築するなら、まずお菓子をあげるといいでいすよ。名付けて“餌付け”作戦です」と半分真面目に教える。
「会話をするきっかけづくりにキャンディー1個」「仕事をがんばった時、労いの言葉とともにチョコレート一粒」――。それだけで、新入社員との精神的距離はぐんと近づくのだ。研修後しばらくして「学んだことの中で一番手っ取り早い『餌付け』を試してみました。ホント、有効でした! 新人と話しやすくなった気がします。お菓子1つでずいぶん仲良くなれるものですね。最近は、ボクも逆に餌付けされています(笑)」といったメールをいただくことも多い。
実は、新入社員に餌付けが有効と気付いたのは、以前、新入社員数百人にアンケートをした時のことだ。入社11カ月ほど経過した2月時点でのアンケートだと。「新社会人になって嬉しかったことは何か?」を書いてもらった中で、「上司がお菓子をくれた」「先輩がお菓子を買って来てくれた」「同僚がお土産のお菓子をくれた」という回答が実は多かった。
具体的に話してもらうと、「残業していたら上司がみんなにドーナツを買ってきてくれた」とか「先輩がよくハッピーターンをくれる」とか具体的なお菓子名まで登場する。それだけ「お菓子をもらった」ことはインパクトが強いらしい。自分がココにいることを他者が認識してくれた、その表れが「お菓子をくれる」という行為なのだ。心理学で言うところの「ストローク(=関わる相手の存在を認める働きかけ)」の一種と言ってもいいだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.