配属されたばかりの新入社員を少しでも早く職場に溶け込ませるために、お菓子を上手に活用した例がある。
新入社員の机の上に「お菓子缶」を置くことにした。みんなでお金を出し合うが、購入権限は新人にゆだねた。彼は自分の趣味でお菓子選びをし、「お菓子缶」に入れておく。それ目当てに上司や先輩も新人の席にわらわらと集まってくる。若い彼の感性で新商品やら珍しい限定ものなどを発見しては並べておくらしい。年長者は新入社員チョイスのお菓子を珍しがって、「これ、面白いね」とか「どこで買ったものなの?」などと彼に尋ねるのだそうだ。
会話は、お菓子の話だけで終わるわけはなく、「ところで、今どんな仕事をしているの?」とか「今は何を習っているところ?」などと周囲の社員たちが彼と会話するようになり、新人が早く職場に馴染んでいくというのだ。
新入社員から上司や先輩に話しかけることは難しい。だから、新人が少しでも早く職場に溶け込むためには、上司や先輩のほうから話しかけることが必要なのだが、上司や先輩も格別用件がなければ、新人と会話をする機会がつくれない。だが「お菓子缶」を新人の机に置くことで、先に紹介した「餌付けーションセンター」のような効果が生まれたのだ。
以上、いろいろと例を挙げて述べてきたが、要するに、お菓子は「オフィスの人間関係の構築を助けるツール」なのである。誰かとお近づきになりたいと思ったら、一粒のチョコレートを持参して声をかけてみてはいかがだろう?
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。
1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。
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