机は、働いている自分を表現する「リアルのFacebook」机を基地化せよ(2/3 ページ)

» 2013年03月22日 10時30分 公開
[美崎栄一郎,Business Media 誠]

5つのセクタに分ける3つの理由

 あなたが三崎くんと同じようにまっさらな机を与えられたとき、まずどんなことを考えるでしょうか。

 取りあえずはPCが使えなくては何も始まりませんから、モニターと本体を接続し、電源を確保してスイッチを入れるでしょう。では、そのモニターや本体はどこに置くでしょうか。文房具やメモ帳、資料などはどこに配置しますか。

 そんなこと、考えたこともない。取りあえず仕事をしながら、徐々に整理していけばいい。そう思う人には、まず机をセクタに分けてとらえることをおすすめしたいのです。

 本連載における机の秘密基地化は、何よりも、机の持っている役割を考えることから始まります。

 最初のミッションは、机を5つのセクタに分け、それぞれの役割と使い方を知ることです。机を秘密基地化し、セクタに分けることの根本的な理由は次の3点です。

  1. 机は仕事を効率的にすることで新たな価値を生み出すためのベースキャンプ
  2. 机は、職場の「円滑な」人間関係を持続するためのツール
  3. 机は、働いている自分をリアルに表現する「本物のFacebook」

マクドナルドが「60秒以内」キャンペーンをやる本当のワケ

 机の整理を始める前に、今から吉野家で腹ごしらえしませんか。もちろん行った気になるだけでいいのですが、もしお近くにあるのなら実際に。

 僕は機会があると吉野家に立ち寄って、食事とともに店員の仕事を「観察」することにしています。特にあることが起きると、しばらく定期的に通って厨房の様子をのぞき込みます。そこには、仕事をいかに効率化するかのさまざまな生きた秘密が隠されているからです。

 あることとは、新しいメニューの登場。できれば、まず登場初日に行くようにします。

 自らコンセプトを「うまい、やすい、はやい」と掲げている通り、吉野家の大きな使命の1つは、いかに早く食事をサーブするかです。料理が出るまでの時間が短ければ短いほど、回転率を上げたい吉野家にとっても、早く食事を済ませたい客にとってもメリットが大きくなります。

 新メニューの場合、牛丼などの定番メニューとはオペレーションが異なります。僕が実際に測ったところでは、定番メニューはオーダーが通ってから90秒以内に出てくることがほとんどですが、新メニューの場合はなかなかそうはいきません。

 ところが、吉野家は徐々に改良を重ねてきます。

 何日か日を置いて同じ店で再び新メニューを頼むと、サーブされる時間が確実に短縮されています。もちろん店員個人の慣れもあるのでしょうが、ときには使う調理器具や盛りつける食器、そして鍋の前に立つリーダーを中心とした店員全員の動き方が変わっている場合もあります。いかに早くあたため、盛りつけるかを追求するために、当初のオペレーションを大胆に変更してくるのです。

 こうした秒単位の効率追求は、吉野家に限らず外食産業では当たり前のように行われています。マクドナルドが「60秒以内」に商品を出すキャンペーンを行って賛否両論ありましたが、あれは何より、従業員のスキルアップや配置、作業効率の見直しに大きく寄与するはずです。改善しない限り、成功しようのないキャンペーンをあえてやるわけです。

 これらは、大げさに言えば経営学の基礎です。わざわざ高い学費を払い、仕事を棚上げしてビジネススクールに行かなくても、昼休みに吉野家でお茶を飲みながら勉強できます。

 マクドナルドが新たなキャンペーンを始めたら、オペレーションがどう変わったかを観察するのです。必ず何らかの変化があるはずです。

マクドナルドのアイデアを机の基地化に生かす

 話を元に戻しましょう。机を5つのセクタに分ける理由は、まずは効率を追求するためです。例えば三崎くんからカッターを貸すよう頼まれた出木杉くんがすぐにその行動を完了できたことで、三崎くんにも、出木杉くんにもメリットがあります。

 三崎くんの場合、運のいいことに頼れる同期の出木杉くんと同じ職場になりました。ウマがあって、優秀で頼れる人が近くにいると、仕事の効率も質もよくなっていきます。

 しかし本当にラッキーだったのは、出木杉くんが普段から机を秘密基地化し、それまで何度も試行錯誤しながら培ってきた運用術を、間近で観察できること。彼は吉野家やマクドナルドの本部、店員たちがしているような努力を、1人でずっと実践してきた人間なのです。

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