携帯電話の分野では、5ドル程度で基本機能のみのシンプルな端末をいち早く提供したノキア(本社はフィンランド)がインド全体の60%のシェアを持ちます。先進国向けの派手な機能は一切省き、その代わりに懐中電灯機能を付けました。なぜ、懐中電灯かって? それは停電が日常的なインドでは必須だからです。
医療分野では、GEヘルスケア(本社は米国)がインドでポケットサイズのワイヤレス超音波機器「Vスキャン」を開発しました。価格がPCを使う従来タイプの4分の1、軽さはなんと20分の1(!)です。携帯性と低価格により、高価な医療設備や検査機器の必要性をなくして現場医療を利用しやすくしています。これまた医療インフラが未整備なインドでは画期的なコンセプトの製品です。
新興国では先進国よりむしろ、イノベーションが起こりやすい環境だといえるではないでしょうか。インフラや制度の未整備、既得権益などのしがらみがないため、思い切ったことができるのではないかと思うのです。
例えば、新興国では先進国ほど電話やPCが普及していません。その理由として、固定通信網が整備されていないことが挙げられます。
そのため、今は一足飛びに携帯電話やスマートフォンが大ブレイク。先進国のようにこれまでの通信網をどう活用するかなどの問題がないため、新興国にもかかわらず最先端の技術が採用されることが多いのです。
実際、インドに続々と製品開発拠点を築く企業が増えています。ペプシコ、シスコシステムズ、IBMなど多くの世界企業が、主要開発拠点と幹部の一部をインドに常駐させ新興国発のイノベーションに取り組んでいます。先進国のお下がりを売りさばく市場ではなく、イノベーションによって、画期的な低価格で最先端の技術を提供する市場を攻略するととらえることが、新興国において成功する秘訣です。
なお本連載の基となった『トップ1%の人だけが実践している思考の法則』(永田豊志著、かんき出版刊)では、5Aサイクルの具体例として、グーグルのほか、ダイソン、アマゾンなど今をときめくイノベーティブな企業群のエピソードを18のケースストーリーで紹介しています。
本連載は2012年12月19日に発売した『トップ1%の人だけが実践している思考の法則』(永田豊志著、かんき出版刊)から一部抜粋しています。
本書は、イノベーションを起こして、ビジネスで勝ち残るための「思考法則」についての解説書です。これからの働き方は、大きく変わります。今まで通りに目の前にある仕事を頑張って働くのではなく、新しいイノベーションを起こしてソリュ―ション(問題解決)することが不可欠になります。本書はあなたの仕事にイノベーションを起こすために、トップ1%のできるビジネスマンだけが実践している「思考の法則」を著者、永田豊志氏が見つけ、分かりやすくまとめたものです。
「営業」「企画」「経理」「総務」「財務」「マーケティング」――など、あなたが何を専門に従事しているかはまったく関係ありません。すべてのビジネスパーソンに必要な「思考」だからです。ぜひ、本書を読んで、変化の激しい時代に、あなたがたくましく生き残れるよう役立ててください。
知的生産研究家、新規事業プロデューサー。ショーケース・ティービー取締役COO。
リクルートで新規事業開発を担当し、グループ会社のメディアファクトリーでは漫画やアニメ関連のコンテンツビジネスを立ち上げる。2005年より企業のeマーケティング改善事業に特化した新会社、ショーケース・ティービーを共同設立。現在は、取締役最高執行責任者として新しいWebサービスの開発や経営に携わっている。
ビジネスマンの「知的生産性の向上」をテーマに精力的に執筆・講演活動も行っている。近著に『知的生産力が劇的に高まる最強フレームワーク100』『革新的なアイデアがザクザク生まれる発想フレームワーク55』(いずれもソフトバンククリエイティブ刊)、『頭がよくなる「図解思考」の技術』『プレゼンがうまい人の「図解思考」の技術』『ノート・手帳・メモが変わる絵文字の技術』(中経出版刊)、『すべての勉強は、「図」でうまくいく』(三笠書房刊)がある。
連絡先: nagata@showcase-tv.com
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