「会社の同僚から仕事のことを相談されが、どう答えたらいいのか分からない」という人もいるだろう。そんな人は、まず「聞く」ことから始めてみてはいかがだろうか。
職場のコミュニケーションに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。「上司にこんなことを言ったら怒られるかもしれない」「部下には気をつかってしまうし」――。
本コラムでは、職場で役立つコミュニケーション術をご紹介します。具体例を挙げながら「なるほど! こういうやり方があるのか」「これなら自分でもできるかもしれない」と感じてもらえるよう、筆者が見聞きした出来事をちりばめています。
明日から……ではなく、いますぐに試すことができる「コミュニケーションのヒント」をご紹介しましょう。
他者の悩みというのは、心の底から理解できないものだと思っている。自分ではない誰かの悩みは、なんとなくは分かるけれど、完全に共感することは無理だろう。考え方も価値観も感性も異なる他人だ。同じ気持ちになるなんて幻想に違いない。それでも誰かが落ち込んでいる時、誰かが悩んでいる時、それを「分からない」「悩むことではないでしょう」と言ってしまう、とそこで話は終わってしまう。
「インフルエンザになって非常に苦しい」と訴えた同僚に「インフルエンザにかかったことがないから分かんないや」と答えてしまうと、会話は途切れるだろう。その時、「私は感染したことがないけど、苦しいらしいね。大変だったね」と言ってあげられれば、相手の気持ちをきちんと大切にしたことになるのではないだろうか。
世の中には、他者の苦しみや悩み、悲しみを上手に聞き、反応する人がいる。どのようにすれば相手に「共感してもらえた」「気持ちを分かってもらえた」と思ってくれるのだろうか。
まずは自分が同じ経験、似たような体験をしている場合。これは比較的反応がしやすい。
30歳のころの話だ。残業していたら上司に呼ばれ、会議室で説教された。それがシツコイ上にちょっと難癖をつけられたような内容だった。反論したいのだが、うまく言葉を見つけられず、歯を食いしばって我慢していたら、涙が出てきてしまった。30分も説教されたからだろうか、ようやく会議室から解放されて、自席に戻ると、なんとなく様子をうかがっていた先輩たちが近づいて来て「これから、皆で飲みに行こうか」と誘ってくれた。
すぐ飲み屋さんに移動し、泣いたばかりの私は、上司に対する悔しさよりも、仕事場で泣いたことの恥ずかしさのほうが増して、つい言い訳のようにこう言った。
「○○さんに説教されたけど、ちょっと理不尽な気がした。でも、それ以上に、自分が泣いたことのほうが恥ずかしい。みっともない」
すると、男性の先輩たちが驚くようなことを口にしたのだ。
「オレも泣いたことあるよ」
「オレも」
「男だって泣くことあるよ」
「なあ?」
「うん」
仕事場で泣くなんて想像もつかないメンバーだったので、びっくりしてポカーンとしてしまった。そして「そうなのか、この先輩たちも泣くのか」と思ったら、なんだか急に元気が出てきた。
彼らが本当に泣いたことがあるのかどうかは今でも分からない。でも「オレも泣いたことあるよ」と言われたことで肩の力がすーっと抜けた。同じ経験をしたことがある、と言われて私は気持ちが楽になったのだ。
「そうはいうけど、感情面で共感ばかりしていても、仕事は先に進まないでしょう?」と思う人もいるだろう。必ずしも同じ気持ちになる必要はないのだ。気持ちを理解だけすればよい。
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