押してダメなら引いてみては――思考停止のススメボクの不安が「働く力」に変わるとき(2/3 ページ)

» 2013年05月15日 12時00分 公開
[竹内義晴,Business Media 誠]

思考をやめて、頭をからっぽにする

 「竹内さん、知ってる? 他人に言うと怪しまれるから、あまり口にする人は多くないけれど、優れたビジネスパーソンほど積極的に“何も考えない時間”をつくっているんだよ。何も考えないというのは、頭をからっぽにするということ。なぜなら、頭をからっぽにすることでリラックスした状態をつくることができるし、頭をからっぽにするからこそ、その空間に新しいアイデアが入ってくるからなんだ」

 これは、私の敬愛する経営コンサルタントのSさんが教えてくれた言葉ですが、私も日常的に“何も考えない時間”を15分ほどつくることにしています。

 しかしながら、何も考えないというのが意外と難しい。気を許すとすぐに「そういえば、次回の誠 Biz.IDの連載ネタ、何にしようかな」などと、無意識に頭で考え始めてしまいます。また、考えないことに意識を向けると「そうだ、考えちゃいけないんだ。考えないように意識しよう……」と、考えないということを考え始めてしまい、本末転倒の状況になってしまうのです。

五感に意識を向けると、思考から離れることができる

 では、どうすればいいのでしょうか。座禅のような特別な場所に行ったり、難しい瞑想(めいそう)のトレーニングをしなければならないのでしょうか。

 比較的簡単な方法があります。それは意識を“思考”ではなく、“五感”に傾ける方法です。

 例えば、イスにゆったり座り、ゆっくりと深呼吸をしながら、閉じているまぶたの裏側に意識を傾けてみます。眼を閉じると真っ暗で何も見えないと思われがちですが、実際には真っ暗ではなく、うっすらと外の明るさが目に入ってくるのが分かります。そして光の濃淡、目を閉じながらも見えるものなどを、興味を持って観察してみます。

 また耳に意識を傾けると、クルマが通る音、時計の針の音、周りの人の声など、今まで聞こえていなかったいろんな音が聞こえてきます。体の感覚に意識を傾けると、座っているイスに触れている感じが分かりますし、呼吸に意識を傾けると、鼻から入った冷たい空気が、出ていくときには暖かくなっていることに気付きます。

 通常、意識は1つのことにしか向けることができないので、意識の興味を思考から五感に向けることで集中し、つい、いろいろ考え始めることを防ぎ、頭の中をからっぽにしやすくしてくれます。軽い瞑想のような状態になるので、これが意外と心地いい。

 それはまるで、お風呂の湯に肩までつかってゆっくりくつろいでいるときのような感覚です。頭と心がリラックスしていると、頭の中に「空間」ができるので、今まで思いつかなかったような問題の解決策が、ふと思いつくこともあります。

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