「超」シリーズで知られる野口悠紀雄氏が解説する、一撃説得法。相手の心のつかむネーミングの重要性とは?
本連載は2013年4月12日に発売した『「超」説得法 一撃で仕留めよ』(講談社刊)から一部抜粋しています。
出版界の最前線で、100万部突破をはじめ数々のヒット作品で多くの読者の心をつかんできた野口悠紀雄が、成功する説得の要点を大公開。
「たくさん投げるは人の常。一撃突破は神の業」「ドラッカーを読むより聖書を読もう」「必要なのは、正しさでなく、正しいと思われること」「うまく命名できれば千人力」「悪魔の方法から盗めないか?」など、全11章で説得までの筋道を、順を追って分かりやすく解説。
説得の理論、相手の心のつかみ方とそのタイミング、ネーミングや比喩の使い方、やってはいけない説得法まで、具体的事例を交えながらビジネスシーンで活用できるノウハウを伝授する。
前回「田中角栄の一撃に見た――相手の心をつかむ『超』説得法」に続き、今回は一撃説得の重要性を感じたもう1つのエピソードとして、私が1993年に出した『「超」整理法』の命名を振り返ってみたい。
私自身の話であり、かつ自慢話めいてしまうので恐縮だが、命名の重要性を示す経験談として聞いてもらいたい。
私は、1993年に新しい整理法の提案である『「超」整理法』を中公新書から刊行した。この本は幸いにして多くの読者に支持してもらい、現在までのところ中公新書の刊行数で第1位である。
本のタイトルのためにそうなったのでなく、そこで提案した方法が優れたものであるためにそうなったのだと、私自身は考えているのだが、タイトルの効果も否定できない。他のタイトルであれば、これほど多くの読者を獲得できなかったかもしれない。
この方法を「超」整理法と呼ぶことは、比較的早い段階で決めた。しかし、途中から迷いが生じた。「あまりに浮ついた名前ではないか?」と思ったのである。その当時から、女の子が「超カワイイ!」などと言うのは普通のことだった。だから、そのレベルの本と思われる危険がある。
物理学では「超音速」「超伝導」「超高圧」「超常磁性体」などの用語があるので、私自身は「超」という表現にあまり違和感がないのだが、「陳腐な命名だ」と感じる人はいるかもしれない。「サタデイ・ナイト・フィーバー」という映画の中で、女主人公が「super!」と叫んだところ、「ダサい表現を使うなよ」といわれる場面がある。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.