新入社員の前で“ネガティブ発言”――絶対に言ってはいけない田中淳子の人間関係に効く“サプリ”(3/3 ページ)

» 2013年06月06日 12時00分 公開
[田中淳子,Business Media 誠]
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ある企業の人事部の人が言っていたこと

 ところで、前述した遅刻や居眠り、愚痴について。

 遅刻や居眠りをしてしまう先輩には、何か特別な事情があるという場合も考えられる。仕事が忙しく、ろくに睡眠がとれていない状況にも関わらず、さらに新人の育成を任されて、仕事中につい居眠りをしてしまう、というような事態に陥っているのかもしれない。それであれば、そういう事情を上司たちが察して新人に話すことも必要だろう。「いいんだ、あれはあれで」とごまかすのではなく、「こういう事情によって、疲労がたまっている状態で、今、状況の改善はしているけれど、理解してほしい」などと分かるように話せばよいと思う。

 愚痴については、やはり、若手にこぼすのはNGだろう。もちろん、先輩たちは、本気で思っているわけではなく、ガス抜き気分でついポロっと愚痴やらネガティブなことやらを言っているだけであることも多い。口で言うほどやる気がないわけでもない、ということも十分考えられる。

 ただ、後輩を愚痴の聞き手として選ぶのはルール違反な気がする。仕事や顧客などについて愚痴られても、後輩はどう応じたらよいか分からない。せいぜいできるとしたら、苦笑くらいだ。聞いているほうに精神衛生上よい効果はもたらさない。愚痴をこぼすのなら、「自分と同等以上の人」を相手にしたほうがよい。せっかく話すのであれば、後輩には、楽しい話をしたい。

 ある企業の人事部の人が「われわれ上司や先輩は、仕事に対する“夢”とか“ワクワクする話”をもっと新入社員に語ったほうがよい」とおっしゃっていた。やる気を持って職場に配属された新入社員たちが「やりがいがありそうだ」「その“夢”に向かって努力しよう」「もっと実力をつけて、先輩たちが話す“ワクワクする”ことの実現に自分も関わりたい」。そう思うような話をすべきだというのだ。先輩たちの夢やビジョンを聞くことで、自分は「どうありたいか」を前向きに考えるようになるだろう。

 新入社員はある意味、真っ白なキャンパスのようなものである。よいことも悪いこともスーっと吸収する。上司や先輩の立場にある人は、どういう背中を見せ、どんなことを吸収してもらいたいのかをしっかり考えて行動したいものだ。

著者プロフィール:田中淳子

田中淳子

 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。

 1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。


  • 著書「速効!SEのためのコミュニケーション実践塾」(日経BP社)、「はじめての後輩指導」(日本経団連出版)、「コミュニケーションのびっくり箱」(日経BPストア)など
  • ブログ:「田中淳子の“大人の学び”支援隊!
  • Facebook/Twitterともに、TanakaLaJunko

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