なかなかできない「本音トーク」は移動時間に田中淳子の人間関係に効く“サプリ”(1/2 ページ)

部下や同僚、先輩と一緒の移動時間は「本音トーク」をするチャンス。オフィスではなかなか聞けない将来のビジョンや仕事への思いなどを話してみてはいかがだろう。

» 2013年06月13日 10時00分 公開
[田中淳子,Business Media 誠]

田中淳子の人間関係に効く“サプリ”:

 職場のコミュニケーションに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。「上司にこんなことを言ったら怒られるかもしれない」「部下には気をつかってしまうし」――。

 本コラムでは、職場で役立つコミュニケーション術をご紹介します。具体例を挙げながら「なるほど! こういうやり方があるのか」「これなら自分でもできるかもしれない」と感じてもらえるよう、筆者が見聞きした出来事をちりばめています。

 明日から……ではなく、いますぐに試すことができる「コミュニケーションのヒント」をご紹介しましょう。


 20年以上前の話なのだが、同僚が外出先から戻って来て、私に愚痴ったことがあった。

 その日、彼女は、上司とともに客先に出かけていた。

 「○○さんったらね、電車に乗って座った途端に漫画を開いて読み始めたの。なんだかなぁと思ったわ」

 この時、先輩は「電車の中で漫画を読まなくても……。しかも、業務時間中に」と言いたかったようなのだが、私がこの話を聞いて思ったのは「せっかく部下と会話する機会ができたのに、みすみす逃しているのはもったいない」ということであった。

 誰かとともに外出する機会がないという方もいらっしゃるだろうが、もし、上司や先輩、同僚と外出することがあるのであれば、この機会を利用するのはおススメだ。

Photo 移動時間は「本音トーク」をするチャンスだ(写真と本文は関係ありません)

 10歳ほど年下の営業と行動を共にしたときのこと。電車で並んで座った私に彼は「将来のビジョン」を語り始めた。「将来は○○をしたいんですよねぇ」という夢のような内容で、しかも、勤務先の業務とも無関係な話だったのだが、それよりも、彼がそんな壮大な夢を持っていることに驚いた。それ以降、彼と仕事をするたびに、この車内での会話を思い出し、「○○をしたい」ということに結びつくかどうかを、私もなんとなく気に掛けるようになった。話を聴いていなければ分からなかったことだ。

 別の後輩と外出したときには、私が彼女に「仕事観」を語ったことがある。「こういうことを大切にしている」とか「お客さまとの関係で気を付けていることは」といった内容だったと思う。私の話を聴きながら、彼女もまた自分の「仕事に対する思い」を教えてくれた。後日、彼女から受け取ったメールには、「淳子さんと外出したとき、仕事に対する考え方を聴けたことが一番刺激になりました」と書いてあり、雑談のようなものだったけれど、意外と相手に影響を与えてしまうものだと思ったことがある。

 考えてみれば、将来のビジョンだとか仕事への思いなんてものは、そうそうオフィス内で語り合うことはない。仕事は忙しいし、雑談している時間もない。タバコを吸う人であれば、喫煙室でそんな会話をすることがあるのかもしれないが、ノンスモーカーが今の仕事に即結びつくわけではないことについて語り合うのは難しいように思う。

 飲みに行くというのも手だが、夜は夜で互いにいろいろあってという場合も増えた。だから、移動車内でこうした「実はこんなことを考えているんだけど」「本音を言うと、こういう想いを抱いて仕事しているんだよね」といった話をするのは非常に意味があるのではないだろうか。

 先輩の想いを後輩が聴き、後輩の想いを先輩が聴く。本音で語れるのは、オフィスから離れているという物理的な環境も影響しているはずだ。

 冒頭に紹介した同僚の愚痴は、「何も移動時間に漫画なんか読まなくても……」という嘆きではあったのだけれども、上司は、部下と対話する時間として活用することに思いが至れば、そのちょっとした時間を有効に使えたに違いないのだ。

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