自分の希望をすべて相手に受け入れてもらうのは不可能です。しかし、正しいアプローチを取ることで、その確率は上げられます。
先日、ライフハッカー編集部に読者から次のような問い合わせがありました。
ライフハッカー編集部さま
「他人の頭に考えを植え付ける方法」という記事を読みました。「他人の心理を操作する」という考えにはどうも抵抗があるのですが、私は自分の望んでいることを相手に伝えるのが得意ではありません。他人を説得して頼みごとをやってもらうための良い方法があったら教えてください。
説得ベタ(Unconvincing)より
説得ベタさんへ
テレビ番組や映画には他人の心を読むのが得意な人物がよく登場します。そこで繰り出される「心を読むテクニック」が、実際の生活で使えるものなのか、疑問に思ったことはありませんか?
これらのテクニックは、確かにある程度は有効です。ボディーランゲージを読み解く方法は習得可能だし、人の感情を操って意のままに動かそうとする人もいるくらいですから。
けれどもフィクションの世界の「心理学」は、実際よりも幅を利かせているようです。現実の世界では、いつでも望み通りの結果が得られるわけではありません。
人には「自分のしたいこと」があるので、「あなたがしてほしいこと」を優先してもらうための、単純な魔法の言葉などは存在しません。ここで覚えておいてほしい重要なポイントは「他人の気持ちを操作して自分の意のままに動かそうとする」のは、倫理に反するだけでなく、ほとんどが時間のムダに終わるということです。
誰かに何かをしてもらったり、あなたにとって重要な問題への意見を変えてもらったりするためには、適切な方法で伝えることが大切です。必ず成功する保証はありませんし、必殺技は存在しませんが「頼みごとを引き受けてもらいやすくする秘訣」を紹介しましょう。
何かをお願いする時、私たちは相手の機嫌を取ろうとする傾向があります。クリエイティブな発想で知られる作家Simon Sinek氏は、この方法では発言のすべてが不誠実に聞こえてしまうと指摘しています。例えば、以下のメッセージを誰かに送ったと考えてみましょう。
○さん
ご無沙汰していますが、お元気ですか。素晴らしい業績を収めているようで、おめでとうございます。いつかお時間があればコーヒーでも飲みにいきましょう。ところでお願いがあるのですが、今オンラインのコンテストに応募していて、大きな賞を狙っています。もし良かったら私に投票してもらえませんか。それでは、また連絡します。
△△より
「お願い」よりも「ごますり」が先に書かれているため、ごますりの効果が消えてしまっています。これでは本心から褒めているのではなく、何かを頼みたくて無理していっているように聞こえてしまいますね。では次に、文章の順序を置き換えた同じメールを見てみましょう。
○さん
もし良かったら、オンラインのコンテストで私の作品に投票してもらえませんか。大きな賞を狙っているのです。ところで、ご無沙汰していますが、お元気ですか。素晴らしい業績を収めているようで、おめでとうございます。お時間があれば、ぜひコーヒーでも飲みにいきましょう。
△△より
「お願い」のあとに「ごますり」を書いただけで、ごますりが突然、本心からのものに感じられるようになりました。頼みごとはもう終わっているので、褒め言葉は裏のないものとして受け止められます。
というわけで、誰かに何かをしてほしい時はいきなり頼んでみましょう。ほかの内容を後回しにすることで、あなたの言葉に力が増してきます。
私たちは皆、決断が苦手です。何かを選択するのには大抵ストレスを伴いますが、それは「選択した結果」ではなく「選択という行為」から生まれています。
じっくりと真剣に考えれば考えるほど、私たちは自制心を失っていきます。「自制心」は無限ではないため、ストレスが溜まれば簡単に使い果たしてしまうのです。
あなたの頼みごとのせいで、相手の悩みを大きくしてはいけません。誰かの助けが必要な時は、相手に複雑な決断をさせずに済むようにすべきです。そのためにも決断しなければならないことを最小限に抑えましょう。
例えば、友達に引っ越しを手伝ってほしいとします。こんな時は、ただお願いするのが最善の方法です。相手に伝えるべきことは「引っ越しの日」と「どのくらいの助けが必要になるか」だけ。
「複数の候補日を伝えて、相手の都合に合わせて決めてもらう」などの行為は避けましょう。余計に決断が難しくなるので、相手の考える時間が長くなり、その分感じるストレスも多くなってしまいます。
決断すべき事柄が増えたからといって、必ずしも相手が「ノー」というわけではありませんが、良い影響がないのは確かです。たとえ相手への思いやりから出た提案だったとしても、相手の決断すべき事柄を増やせば、頼みを引き受けてもらえる可能性は低くなります。
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