前編 ポメラ「DM25」で“ノートPCレスのワークスタイル”に挑戦IT記者はポメラでノマドワーカーになれるか(3/3 ページ)

» 2013年06月18日 00時00分 公開
[森田秀一,Business Media 誠]
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 また、Ctrl+@キーでの半角無変換(後)変換ができるのもビックリした。DM25にはATOKが搭載されているので当然と言えば当然だが、筆者はこの操作ができた非Windows系ATOKには初めてお目にかかった。どういう機能かというと、日本語入力モードONのまま「windows」と7文字分のキーを入力してしまっても、確定前であればCtrl+@キーを押すごとに「WINDOWS」「Windows」に変換することができる。

 このCtrl+@キーによる変換は、長年のATOK経験によって染みついてしまっていて、MS-IMEに乗り換えられない一因にもなっていた。こういった細かな部分の再現は実にありがたい(どうやら最近のMS-IMEではCtrl+Tキーでほぼ同様の操作ができるようだが)。

Photo ATOKのキーボードレイアウトで入力可能(画面=左)。Ctrlキーの組み合わせによるショートカットも使える(画面=右)

 一方、記号の入力には若干戸惑った。例えば「…(三点リーダー)」は、普段だと「・(中黒)」を入力して変換したのだが、初期設定のポメラではできないようだった。説明書を見ても、記号パレットのようなものは見つからない。さて、どうしたものか。

 これは日本語で「てん」と入力して変換していくと、無事「…」に変換できた。このほか「『』(二重かっこ)」も「かっこ」と入力すれば変換可能だった。これらの変換をスムーズにするための単語登録機能もDM25は完備しているし、PC版ATOKの辞書データ取り込みも同様に可能だ。

Photo 単語登録も可能。特に、多用する記号は登録しておいて損はないはずだ(画面=左)。F7キーを押すか、メニューで「文字情報表示」を押すと、総字数や総行数が表示される。ただし、現在何行目にカーソルがあるのかは、画面右端のスクロールバーから推測するしかない(画面=右)

 このほか、編集系の機能についても極端な機能不足を感じることはなかった。Shift+カーソルキーで範囲指定し、Ctrl+X/C/Vキーでカット/コピー/ペーストすることもできる。ポメラでは複数の文書ファイルを同時には開けないが、ファイル間でのコピー&ペーストは問題なくできる。

Photo Shiftキーとカーソルキーで範囲選択し、コピー&ペーストができる。これだけできれば十分だ。ちなみに検索・置換系の機能もしっかりある(画面=左)。CtrlキーとCapsキーの入れ替えといったカスタマイズにも一部対応する(画面=右)

取材現場での写真編集が必須のライターにポメラの使い道はあるのか?

 繰り返しになるが、ポメラはテキスト入力に特化することで、ノートPCの多機能性を切り捨てたマシンだ。それだけに、どういったシチュエーションで使うかをあらかじめ考えておかなければ、宝の持ち腐れになってしまう。冒頭のモバイルギアの話に引き続き恐縮だが、まずは筆者自身のケースを考えてみたい。

Photo 筆者の仕事では、原稿作成だけでなく、写真関連の作業もある。こうなると、さすがにポメラに全て依存するわけにはいかない……

 ほぼWeb専業のライターである筆者の仕事に欠かせないのは、ノートPC(とそのACアダプター)、デジタルカメラ、ICレコーダーの3つ。あとはメモ帳とボールペンがあれば、発表会やインタビュー取材をこなせる。

 仕事の中で特に多いのが、発表会や講演を取材し、“当日中”に原稿を仕上げる(=編集部へ送る)というもの。テキストファイルにレポート文を執筆するのはもちろん、取材時の写真も自分自身で撮影し、簡単なトリミングやレタッチを施す必要がある。

 この段階でもうすでにポメラだけでは仕事ができない。取材現場付近の喫茶店であろうが、出入りの編集部で席を借りようが、写真の編集にはどうしてもノートPCがいる。ポメラをノートPC代わりにすることはできない。

 では、取材から掲載までのスケジュールに若干の余裕がある場合はどうだろう。月曜日に取材し、原稿の締切が金曜日というようなケースだ。これならば、取材時に写真を撮る必要があっても、現場ですぐに編集する必要はない。ポメラでメモをとり、仕事場(自宅)のデスクトップPC上でもろもろの作業を行えばよさそうだ。

 ただ、この場合でもノートPCは個人的に必須だと思っている。撮影した写真、ICレコーダーで録音した音声などを、すぐにノートPCへバックアップしておきたいからだ。ノートPCが壊れても原稿は書き直せるが、写真や音声などの素材は取材相手がある以上、そうそう再収録できるものではない。このため取材が終了するとすぐにデジカメやICレコーダーからファイルをコピーし、二重化しておきたいのだ。ノートPC側でとったメモについても、デジカメ用SDカードの空きフォルダーに逆コピーするのが日常だ。

 というわけで筆者の仕事には、いまのところポメラが入り込む余地はない。「それを言っちゃあ、おしまいよ」感がアリアリだが、こればっかりはどうしようもない。

 それでもあえて使い道を考えるなら、出先でノートPCが壊れた際のバックアップだろうか。DM25クラスのコンパクトさであれば、万一に備えてカバンに忍ばせておくこともできるかもしれない。ただし、筆者の場合はメモ帳とボールペンをノートPC故障時の備えとして考えてはいるのだが。

結論───単機能だからこその「集中できる」マシンとしての道を

Photo 筆者の自宅作業環境はCDやらゲームやら、とにかく誘惑だらけ。ネットに繋がらないポメラには、「集中して原稿を書くためのマシン」としての役割を期待したい

 一般論として、ポメラを役立てられそうなシチュエーションについても考えてみた。文章入力をしつつも、同時に写真を処理する必要がないとなると、会議の議事録作成などが挙げられるだろうか。ただし、社内の会議室などで行われるものであれば、ノートPCを持参するのはそれほど苦にはならないはず。「ポメラでなければダメ」という領域には達していないように思える。

 実は今回、仕事場でじっくりとポメラを試用して実感したのは「とにかく集中して文章を書ける」という点だった。途中でなにか気になってネットで調べものをしようにもブラウザはなく、メールやメッセンジャーの通知もない、面白動画やお気に入り音楽の再生もできない。あるのはテキストエディタだけで、文章の作成に集中するしかない。こうやってできた文章を、あとから推敲すれば、今までとは違った仕上がりになるかもしれない───というのが、ポメラに対して抱いた期待だ。

 「幅広キーボードとは言え、入力には難があるのではないか」という、試用前の懸念はかなり払拭された。キーピッチうんぬん以前に、ようはポメラを設置する場所が重要なのだと思う。座り心地のよい椅子、上半身をしっかり固定できるだけの机、隣の席との適度な間隔。ポメラといえども、「作業をしやすい環境」は欠かせないのだ。

 筆者個人としては、ポメラは仕事用というよりも、徹底的に趣味目的で使い倒すべきだと感じた。中でも集中して長文を書く必要があるような、例えば小説家や、オピニオン中心のブロガーたちが、ネット上の情報やメール処理といった雑事に振り回されることなく、ただ自分の意見を文章として吐き出す時にこそ重宝するのではないだろうか。


 レビューの後編では、Evernoteへの投稿やFlashAirに対応する最上位モデル、DM100でノマドワークに挑戦する。

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