部下に期待していることをストレートに伝えればいいだけの時でも、大げさにいったり、相手を責めるような表現を使ってしまうことはないだろうか。気持ちが伝わる言い方の一工夫をご紹介しよう。
職場のコミュニケーションに悩んでいる人も多いのではないでしょうか。「上司にこんなことを言ったら怒られるかもしれない」「部下には気をつかってしまうし」――。
本コラムでは、職場で役立つコミュニケーション術をご紹介します。具体例を挙げながら「なるほど! こういうやり方があるのか」「これなら自分でもできるかもしれない」と感じてもらえるよう、筆者が見聞きした出来事をちりばめています。
明日から……ではなく、いますぐに試すことができる「コミュニケーションのヒント」をご紹介しましょう。
外資系に勤務していた20数年前、米国本社で研修を受けたことがある。“Communication Skills”という3日間のトレーニングだ。米国人20人くらいと日本人1人という環境で英語だけの研修。ロールプレイも多く、大変だったが、同時にこれを日本に持ち帰ろうと決意し、今に至るわけで、人生何が転機になるか分からないものである。
それはさておき、その「コミュニケーションスキル」のテキストで、「傾聴」(アクティブ・リスニング)を学ぶ章の一部に「クエスチョンマークの裏側に」といった項目があった。聴く側のスキルとして、「?」(クエスチョンマーク)の意味を読み取るべし、という内容だ。
例えば、「どうしてすぐ連絡してくれなかったの?」という問いは、「連絡しなかった理由」を尋ねているのではなく、「連絡してほしかったのに」というニュアンスが行間に含まれているからそれを読み取り、「あー、ごめんなさい」と応じるほうがよい。
あるいは、「すごーい、これ、全部自分で作ったの?」と言われた時、「自分で作ったかどうか」を問うているのではなく、感嘆し、褒めてくれているのだと理解すべし、と。
私たちが日常で「疑問文」として繰り出す文言の中には、時として、このような本音が見え隠れしているのだから、聞き手は「クエスチョンマークの裏側」を読み取る必要がある――。トレーニングでは、こう教えていた。
言われてみればそうだなぁと目からうろこが落ちるとともに、聞き手にそうやって「?」の裏側を読み取ることを期待するだけではなく、伝える側にも表現の工夫が必要だとも思った。「?の裏側」を聞き手に読み取らせるようなややこしいことをしなくてすむよう、考えていることや気持ちをストレートに伝えることも大切ではないだろうか。
私たちは、自分が相手に期待していることをストレートに伝えればいいだけの時でも、つい異なる表現を使ってしまうことがある。大げさにいったり、相手を責めるような表現を使ってしまったりすることもあるだろう。
こんな経験がある。
全員が参加すべき会議が日中設定されていた。仕事柄、日中はメンバーが揃いにくい職場のため、会議や打ち合わせといえば、17時以降に開催することが多いのだが、なぜか、その会議に限って、14時〜16時といった中途半端な時間設定だった。複数回にまたがる会議だったため、どの日程も参加できないメンバーが続出した。そのことを疑問に思った若手が、ある時、マネージャに向かって、こう言った。
「どうして、私たちが参加できない時間に会議を開催するんですか? 全員が知っておくべきことを話し合う場ですよね。夕方開催にしてくれないのは、なぜなんでしょうか?」
食って掛かるような言い方にその場がし〜んとした。
彼の言いたいことは分かる。私も1人のメンバーとして、夕方から開催するなり、業務の調整を図って参加しやすい状態にするなり、何か工夫すればいいのいなぁ、と思っていたからだ。
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