では自発的な部下を育てるためには、具体的にどうしたらいいのでしょうか。私は、自発的の源泉は「命令」ではなく「楽しさ」だと思っています。「自発的になりなさい」と言われるからやるのではなく、「楽しいからやりたくなる」という感覚です。
だからといって「こうすれば仕事は楽しくなります」という安直なものでもないでしょう。そこで今回提案したいのは「何でも言える雰囲気」「何でもできる雰囲気」から作っていくことです。
例えば部下が上司にある提案をしたとき、普通の上司は、すぐに提案の内容をジャッジし「そんな提案はダメだ」と伝えてしまいます。また、部下が想定外の行動を取ったときもそうです。「余計なことをするな」と、まず否定から入ってしまいがちです。
ある中間管理職のOさんは、「行動」と「内容」の評価を分けて伝えるように意識しているそうです。どんな突飛な提案であっても、まずは「ありがとう」と伝える。こうすることで、提案の「内容」はともかく部下が提案した「行動」は評価されることになります。
Oさんはこう言います。「上司に自分の考えを発言するのは勇気がいることです。それなのに、なんでもかんでも否定され続けていると、提案しようと思う自発性自体を削いでしまいます。そこで、内容はともかく、提案しようと思ったこと、そして提案してくれたことはきちんと評価したいし、その勇気をたたえたいと思ったんです。もし、内容的に補完したり修正したりする必要があれば、そのあとで伝えればいいじゃないですか」と。
多くの人が「もっとこうしたほうが簡単なんじゃないか」「もっとこしたほうがより良くなるんじゃないか」という意見を持っています。それを言わせるか、言わせないかは雰囲気次第。その雰囲気を作るのが、自発性を育てる最初のステップだと思います。自分の提案に耳を傾けてくれたらうれしい。それが、次の「言ってもいいんだな」「やってもいいんだな」を育てていくのだと思います。
部下が自ら進んで行動してくれたら上司自身も楽になるし、本来やるべき仕事ができるようになります。「自発的になりなさい」と直接的に伝えるよりも、楽しく働ける環境を作ることから意識してみてはどうでしょうか。
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