相手の愚痴がピタリと止み、気持ちが切り替わるこんなひと言田中淳子の人間関係に効く“サプリ”(2/2 ページ)

» 2013年07月18日 10時00分 公開
[田中淳子,Business Media 誠]
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 コミュニケーションというのは、「人と人との間でメッセージの交換をする」ことである。そのメッセージの構成要素には、「内容」(伝えたい事柄そのもの。事実とか論理とか考えとか)と「感情」(喜怒哀楽など)の両方が含まれている。その割合は、5対5ではなく、時に、内容>感情だったり、内容<感情だったりする。

 「内容」>「感情」。至極冷静に報告したり、質問に答えたりしているような場合がこれにあたる。特別、感情が揺さぶられたりはしていない。

 「内容」<「感情」。会話の内容そのものより、気持ちのほうが大きい。うれしい、悲しい、憤りを感じているなど。分かりやすいのは、クレームを言ってくるケース。「クレームの内容」自体はある1点に絞られているが、それに感情が絡んでくるので、同じことを何度も何度も繰り返し訴えているような場合がある。これは、「感情」主体で話しているからである。

 「内容」のほうが大きい場合は、互いに冷静に対話していけばよい。しかし、冒頭の例のように「感情」が大きくなっている時というのは、まずは感情面を理解してほしいと思うものだ。

 以前、ある男性(Aさんとしよう)が話してくれた例。

 独身寮に入っていたAさんの部屋には、同じ寮の同期男性Bさんがよなよな晩ご飯を食べにやってくるのだという。そして、このBさんは、ご飯を食べながら、会社や上司、いま手がけている仕事など、あらゆることに愚痴をこぼすらしい。それを毎晩のように聞いているAさんは、Bさんの愚痴も聞き飽きたし、何とか解決策を提示しようと「上司にこう話してみたら」とか「プロジェクトメンバーと協力して……」などと思いつく限りのアドバイスを試みていた。「それは分かるんだけど、実践するとなると難しいんだよ」などとBさんは言い、結局、翌日もまた、夜ご飯を食べにやってきては、愚痴るのだそうだ。

 あるときAさんは、「愚痴を言う」というのは、「分かってほしいだけなのではないか」と考え、いつもであればアドバイスをするところ、その晩は我慢して話が途切れるところまで徹底的に黙って聞くことにした。そして、一区切りついた時点で、ただ一言、こう言ってみた。

 「おまえも大変だなぁ」

 すると、Bさんは、Aさんの目を見つめ、「そうなんだよ。分かってくれる?」といい、急に表情が明るくなって、「あまり愚痴ってばかりいたら飯もまずくなるし、楽しい話しようぜ」と、自分から話題を切り替えたらしい。

 いろいろなアドバイスをしていたときには見られなかった反応だ。

 Aさんは、こう述懐する。「Bがほしかったのは、共感だったんだなぁ。分かってほしかったんだなあ。毎日、アドバイスばかりしていたけれど、そんなこと必要としていなかったのかもしれない」

 気持ち分かる。

 大変だなぁ。

 こういう言葉だけで相手が救われることがある。

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著者プロフィール:田中淳子

田中淳子

 グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。

 1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。


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