「先延ばしの本質」と題された学術研究によれば、先延ばしには4本の「柱」があり、大部分の人はこれに影響を受けているそうです。
何かに着手するときに4本の柱のうちのどれが邪魔をしているのかを自覚すれば、開始する前のためらいを打ち破るのに役立つかもしれません。実際、ツァイガルニク効果に関する研究からも分かるように、物事は取り掛かるまでが一番大変なのです!
では、「4本の柱」を紹介しましょう。
簡単に言うと、面白くないとか、長い目で見て自分にメリットがないとか、取り組むだけの価値が低そうに思える場合です。不快な仕事や退屈な課題の場合、こちらの研究が勧めているように、楽しい活動と抱き合わせにできないか考えてみましょう。例えば「コーヒーショップで、一番好きなドリンクを飲みながらこの仕事をやっつけてしまおう」というのも良いでしょう。あるいは、先ほど触れたように、「あと戻りできない」締め切りを設定するなど、人工的にモチベーションを高める要素を加える手もあります
残念ながら、先延ばしにはその人の性格も関わってきます。ほかの人と比べて、欲求に負けやすい傾向の強い人はいるのです。性格は自分ではどうにもなりませんが、幸いなことに環境を変えるのはずっと簡単です。例えば、筆者はビーフジャーキーが大好物で、家の食料棚にこれがストックされていたら文字通り口いっぱいほおばってしまいます。大食いの衝動を最小限に抑えるために、筆者はビーフジャーキーをはしごがないと手が届かない高いところにしまっています。自分の意志の力を当てにせず、手に入れるまでの面倒さを増すことで対処したわけです。また、仕事に取り組む時は、図書館のような静かな場所に行って気が散るのを防ぎます。
グズグズ先延ばしするのは、簡単には片付けられそうに思えない課題だからです。この「柱」を打ち倒すのはなかなか難しいのですが、一番良い手は、最初の一歩を踏み出すことが一番大変で、しかもその大変さは心理的なものだと理解することでしょう。大抵の場合、間近にある「やるべきこと」に取り組んでみると頭の中で悩んでいたよりもずっと簡単に終わるというのはよくある話です。ですから、まずは5分間やってみることです。それで全体の様子も分かるでしょう。
よく先延ばしをする人は、失敗を恐れる気持ちが強いケースが多いようです。この「柱」は、自分の能力に対する自信と深く関わっています。
未来に思いをはせるのは一般的には問題のない行為ですし、あれこれ考えるのは楽しいものです。でも、過度な夢想は目標達成に悪影響を及ぼし、人がやるべきことを先延ばしする大きな要因となることが分かっています。また、これは多くの場合、完璧主義とも関わっています。
モチベーションと想像力に関する研究によれば、「天空に城を築く」ような非現実的な想像をめぐらせていると実現可能な目標の達成が阻まれてしまうおそれがあるそうです。この研究では、未来について想像をめぐらせる頻度を被験者に尋ね、さまざまなカテゴリーについて達成度を検証しました。
では、求職中の被験者の結果を見てみましょう。仕事に就いたあとのことをあれこれと想像する時間の多かった人ほど、実際の就職率は悪くなりました。大学卒業から2年後、「夢見がちな人たち」には、以下の傾向が認められました。
これはいただけないですね。しかし皆さんご存じの通り、前向きな想像はモチベーションをかき立て私たちを前に進める原動力にもなります。では、何が問題なのでしょう?
UCLAが行った研究によると、大切なのは「何を想像するのか」のようです。将来を思い描く際に目標達成のために必要なプロセスも一緒に思い描いていた人では、ほかの人に比べて優秀な成果を挙げるケースが多く見られました。例えば、外国語を習うことを考える時に、仕事帰りに毎日勉強する自分の姿を思い浮かべるといった具合です。
想像が実際に効果を発揮したケースでは、以下に挙げる2つの理由が考えられます。
ですから、白昼夢を恐れる必要はありません。ただし、目標を達成したあとの「すてきな暮らし」のメリットばかりに目を向けるのではなく、実現のために不可欠な、実行できるステップも忘れずに思い描くようにしてください。
「恐れない。ブレない。重要ではないものを完全に脇に追いやる能力」
上のせりふは映画『ファイトクラブ』に登場する名言ですが、先延ばしに関して書いてきたこの記事の最後に、筆者から皆さんにお伝えしたい教訓でもあります。
多くの人はやるべきことがあまりに多すぎるために先延ばしに至ります。自分の目標実現に向けて本当に役立つものかどうかを判断し、それ以外には「ノー」と言う能力は、簡単には身に付きません。ですが、意味のない義務の山に押しつぶされそうになってしまったら、難しい課題に取り組むのは不可能です。だからこそ、これはぜひとも身に付けるべき能力です。生産性の向上には、思い切った切り捨てが不可欠なのです。
自分勝手に見えるかもしれませんが、ほかの人の世話が焼けるようになる前に、まずは自分自身に責任をもつことが肝心です!
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