なぜこんなことになってしまったのでしょうか?
この15年間、日本のサラリーマンが仕事をさぼってきたから? そうではありません。この間も変わらず日本のビジネスパーソンは、がんばってきました。
「この15年間、ずっと不景気だから?」「景気がよくなれば給料は上がる?」
残念ながらこれも違います。確かに、給料が下がってきたのは「不景気だったから」でもあります。しかし「景気がよくなれば再び給料が上がる」と期待するのは楽観的すぎます。
給料はなぜ下がってきたのか、そしてこれから自分の給料はどうなっていくのかを知るためには、そもそも給料がどんな理屈で決まっているのかまでをさかのぼって考えなければなりません。一体、給料はどのように決まるのでしょうか。その真実をお伝えしましょう。
「これだけ成果を上げたんだから、もっと給料を上げるべきだ!」
そういうふうに文句を言う人は多いですし、その気持ちも分かります。しかし率直に言うと「成果を出したから給料を上げてほしい」という要求は、筋違いなのです。
なぜか? 給料はそういうルールで決まっているわけではないからです。
「がんばっても報われない時代」と揶揄(やゆ)されることがあります。それは「がんばっても正当に評価されない」という意味で語られていることがほとんどです。
「うちの会社はブラック企業なんだよ」「結局、資本主義では人間は幸せになれないんだよ」
愚痴まじりにそう言います。ただ、僕がこの本で伝えたいのは、そういうことではありません。
世の中には「ブラック企業」と呼ばれる企業が確かにあります。また、資本主義の中で人間らしい生活ができなくなっている人がいることも事実で、それは許されることではないと思います。
ですが、それと「がんばったら給料を上げるべき」ということは、まったく別問題です。
「がんばって成果を上げれば給料が上がる」というのは幻想です。「成果を上げても、どうせ無駄」ということではなく、「成果を上げる=給料が上がる」という仕組みではないことを知ってほしいのです。
現実に、日本企業において給料の金額を決める要素の中で「個々の従業員が出した成果」はわずか4.1%しかありません。単純計算で、社内で最も成果を上げている人が+4.1%、最も成果を上げていない人が-4.1%と考えると、できる人とできない人とでは、8.2%しか給料が変わらないことになります。
仮にその会社の平均月収を40万円とするならば、一番できる人が41万6400円、一番できない人が38万3600円です。差額はわずか3万2800円。この金額を見ると、感覚的にも合っているのではないでしょうか? これが給料のルールなのです。
自分の給料がなぜその金額なのか、論理的に話せる人はほとんどいません。「給料が安い!」と嘆く人はいますが、ではいくらが妥当な金額なのか、自信を持って語れる人はいません。
考えてみると、僕たちは給料がどのようなルールで決まるのかを聞いていません。学校ではもちろん、会社に入ってからも教えてもらっていません。上司や先輩たちから話を聞いて分かった気になることもありますが、実際は「なんとなく」でしか分かっていません。
そしてそのなんとなくの知識に基づいて、自分の給料を増やそうとしているのです。何でもそうですが、なんとなくの知識では、例えばスポーツもできないし、ダイエットをしてもおそらく成功しません。もし、なんとなくの知識で株式投資をしたら絶対に損をします。
望む結果を得たいのであれば、その場のルールを知ったうえで闘わなければいけません。ルールを知らずに臨んでも、勝つ可能性はほとんどないからです。
今の時代、一生懸命がんばらなければ生き残れません。しかし、どんなにがんばっても、ルールを知らなければ勝つことはできません。いつの間にか負けてしまいます。
「何でがんばっているのに、成果を出しているのに給料が上がらないんだ!」
もしあなたがそう感じているのなら、何よりも先に「給料のルール」を知るべきです。それが「安月給の思考」から抜け出す第一歩となります。
(次回は「残業代のカラクリ」について)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.