未来のスマホはどうなる? 通信速度は300万倍で“スーパー”に――孫社長、語るSoftbank World 2013

ソフトバンクが年次イベント「Softbank World」を7月23、24日に開催している。孫正義社長は初日の基調講演で、世界に挑み続ける企業に向けてクラウドやビッグデータなど、デジタル技術の活用を勧めた。

» 2013年07月23日 15時40分 公開
[上口翔子,Business Media 誠]
ソフトバンクの孫正義社長。スプリント買収について「すったもんだあって、結局は少し高くついてしまった」と振り返った

 日本時間の7月11日、ソフトバンクは米携帯電話大手のスプリント・ネクステルの買収を完了。ソフトバンクグループとして世界第3位の携帯電話事業者に躍り出たのは記憶に新しい。

 7月23日、年次イベント「Softbank World 2013」の基調講演に登壇した孫正義社長は「これまでソフトバンクは日本のモバイル事業で3位か2位かの話をしていた。しかしもはや国内で何位かの議論はどうでもいい。それよりもっと世界で何位か、測り方のモノサシを変えた」と、グローバル視点へ本格的にシフトしたことを伝えた。


もっと積極的にデジタル化を

 この日の基調講演のテーマは「世界へ挑む」。ソフトバンク自身、そして世界へ挑戦する日本企業に向けて孫社長は次のように話している。

 「先日参議院選挙が終わり、日本経済もようやく再成長する空気が出てきた。経済を活性化するためのテクニック、財政はさまざまあるが、結局最後は成長戦略がものをいう。そういう意味で、日本が過去に高度経済成長をしていた時期は家電業界や自動車業界の創業者が世界に向けて大きく打って出ていた。

 少子高齢化時代を迎える今後、日本企業が世界に出ていくことは必要不可欠。そして、もっと積極的にデジタル化を図っていかなければならない。というのも、最近赤字が続いている企業に共通するのは、デジタル化が遅れていることだと思っている。日本は電子部品を小さく薄く故障しにくく、といったようにハードウェアに関してはお家芸の技術を持っているが、それをソフトウェアとうまく融合してクラウド連係したり、ビッグデータを活用してマーケティングに生かしたりといったことが足りていない。もっと積極的にデジタル化を図ることが必要だ。

 私は挑戦する者にのみ、未来は開かれると思っている。自ら挑戦もせずに未来があると思うのは、よほど先代に恵まれたかラッキーか。しかし結局そういう幸運は長くは続かないし、幸運があるということは不運もある。自ら挑戦し続ければ、多いなる成果が生まれる」

 孫社長はここで、3年前に作成したソフトバンクの新30年ビジョンを紹介。30年ビジョンを作成するに当たってさらに先の300年後の人類や社会、テクノロジーの進化を考えたことや、30年後にはコンピュータが人間を上回るハードウェア能力を持つ時代が来ると確信したことを述べた。

 「30年後には、自己学習能力を持った知的ロボットが人間と共存する時代がくる。そんなとき、人間が不可能として諦めていた――例えば災害救助や介護医療の現場で活躍するロボットも出てくるだろう。

 また人間もより無線でつながるようになる。チップを介して自分の頭で考えていることが分かり、それを遠くにいる人にも伝えられる。科学的にそういうものが作られるのではないかと思っている。よりサイエンスフィクションの世界に近くなるだろう」



 そんな時代が来たとき、今でいうスマートフォンはどのような進化を遂げているか。孫社長の計算では、CPUが現状と比較して100万倍、メモリ容量も100万倍、通信速度は300万倍となり、未来のモノを“スーパースマートフォン”と呼んでいた。

 「ここまで1つの端末でできると、クラウドはいらない。ローカルで全てできるじゃないかと思う人がいるかもしれない。しかしそれは間違いで、通信技術がさらに進化し、ユーザーはローカルにあろうがクラウドにあろうが、ほとんど境界なくコンテンツにアクセスできるようになる。また、あらゆる機器がクラウドとつながり、人々は無意識にライフログを取られている時代がくる。

 リアルタイム翻訳をしながら海外の人とコミュニケーションが取れたり、砂漠地域にいても高度医療が受けられたり、ワークスタイルが爆発的に効率化したり――。そんな時代が来たとき、ソフトバンクは企業理念である「情報革命で人々を幸せに」を実現するため、世界中の人々のワークスタイル変革を支援しつつ、自らもモデルケースとして率先してワークスタイル改善に努めているとした。

クラウド活用でワークスタイルを率先して改善

 ソフトバンクはクラウドとビッグデータを積極的に活用している。孫社長は最近成功した事例として以下2つを紹介した。

電波改善

 1つは電波改善。約1カ月間に7億5000件のスマホユーザーの接続状況を分析し、効率のよい基地局の改築に役立てた。ドコモの2トップ端末がどれほどの通信接続率を持っているか、auのどの端末が一番接続率が悪いのか、どこの通信事業者よりも詳しく知っていると自負した。

ツイート解析

 上記の改善策によって効率よく基地局を設置することに成功したが、それでも「ソフトバンクはつながりにくい」イメージを持っている人は多いという。そこで世の中の声を拾う策としてTwitterのツイートを自然言語処理技術(※人間が行う言語処理をコンピュータに機械的に理解させる技術)で感情分析を行った。約1億2000万件のツイートを分析し、人々の前向きな言葉と批判的な言葉がどのように変化しているのかを把握。今後の改善策に役立てるとしている。


 Softbank World 2013は、7月24日もザ・プリンスパークタワー東京で開催する。計98社の協賛企業らによる展示や事例紹介のほか、ウェアラブルデバイスで注目の「Telepathy One」の講演なども予定されている。

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