モバイル向けコンテンツ管理製品「Handbook」を提供するインフォテリアでは、導入企業約500社の事例を基に、企業のiPad導入が成功する5つの条件を示している。
なぜあの企業のiPad導入は成功して、うちの会社で配布したiPadは社員の机の引き出しで眠ってしまっているのか。iPad導入の成功と失敗の境界線はどこにあるのか――。7月23〜24日に開催されたソフトバンクの法人向けイベント「SoftBank World 2013」の中で、インフォテリアの平野洋一郎代表取締役社長は「iPad導入が成功する5つの条件」を紹介した。
インフォテリアでは、業務で扱う各データをスマートフォンやタブレットで利用できるコンテンツ管理製品(MCM:Mobile Content Management)「Handbook」を提供している。以下5つの条件は、Handbookを導入した約500社の事例からインフォテリアがまとめたものだ。
ここ数年、企業のタブレット導入への関心が高まっているのは多くの人が肌感覚で分かっていることだろう。社員1人1人がiPadのような高機能端末を持ち、いつでもどこでも仕事ができるようになれば、個々の生産性は飛躍的に向上する。ただし、ただやみくもに導入しては失敗することも、ここ数年の事例から分かっていることだ。平野社長のコメントとともに、iPad導入が成功する5つの条件を順に見ていこう。
せっかく導入するのだから、あれもこれもとやりたくなる。しかし、まずは単一の目的や用途に絞り、スタートすることが重要だ。そのほうか効果が測りやすく、かつ知見も整理、活用できるので後に利用範囲を広げる際のノウハウにもなる。
具体的にはどういうことか。企業の職種は「オフィスワーカー」「セールスワーカー」「フィールドワーカー」の3つに分類できる。オフィスワーカーは社内でデスクワーク中心の人。セールスワーカーは店舗や訪問先で営業や販売、接客活動をする人。そしてフィールドワーカーは工場や建築現場、輸送機内など現場で活動をする人だ。
各職種ごとに適したタブレットの活用法があり、それが以下画像に示されているものとなる。自社の目的を明確にしておくことで、どの職種の人にどういった用途で使ってもらうのが良いのか、的を絞ることで効果が得られる。
条件1から「では、導入する部門と用途を絞ったスモールスタートをすればいい」と思うかもしれない。確かにスモールスタートはいいことなのだが、1つ注意点がある。それが条件2の「部署を分散せず集中すること」だ。
平野社長はこんな失敗事例を紹介した。ある企業ではトップダウンで社内の各部署に1台ずつiPadを配布。「試しに使ってみろ」とだけ指示を出したが、部署に1台だけではどう使えばいいのか分からなかった。結果、そのiPadは引き出しに眠ることとなったという。
この場合、成功パターンはこうだ。ある1部門に絞って、部署のメンバー全員にiPadを配布する。そこでの活用事例を検証し、ノウハウを得てガイドラインを作成。それをもって会社全体での実運用を開始していくのがよいだろう。
PCと同じように、スマートフォンやタブレットにもセキュリティ対策は必要だ。ただし、それらのスマートデバイス時代が世の中に出てくる以前のセキュリティポリシー、つまり社内で利用するPCを前提に作成したポリシーのまま運用したのでは、むしろ高コストになってしまい、結果、タブレットを導入できないなど本末転倒なことが起きてしまう。
平野社長は「セキュリティは、どこまでも強化できる。どこまでが適切な範囲なのか、タブレット運用に際しては、従来のセキュリティポリシーを見直して、扱うデータの機密度に応じた運用をしていくのが現実的。スマートフォンやタブレットがなかった時代のセキュリティポリシーとは一度切り離して運用していくべきだろう」としている。
PCをメインの業務端末として利用している場合、特に大企業を中心に自社オリジナルの業務アプリケーションを開発、利用しているところは多い。これに対し平野社長は「スマートデバイス時代に自社アプリを開発することは罪作りだ」と言い切る。
スマートフォンやタブレットは、端末自体の進化のスピードが速いうえにOSの更新頻度も高い。また端末の上で動くコンテンツも多様化し、アップデートも頻繁に起こる。このスピードに追い付くのは非常に困難で、結果、対応しきれずにいる企業は多いという。
一方、うまく運用している企業は、自社アプリ開発は行わない。低コストで汎用性のあるアプリを使うことで、IT管理部門の不可も減り、ユーザーの不可も少ないという。
スマートフォンやタブレットはアプリの使い方次第でいくらでも便利に使うことができる。言い換えれば、アプリの選定基準も重要ということだ。平野社長によるとiPad導入に成功している企業に共有することとして「用途ごとにアプリは選ばず、汎用的なアプリ、特に複数人でのやりとりが発生するような情報共有アプリには汎用的なものを選ぶべきだ」という。
用途ごと個別にアプリを選んだ場合、アプリ間の情報共有が困難で管理の手間やコストが増大する。汎用的なアプリであれば、他の職種や部門への展開が容易で管理やユーザーサポートが低コストで行えるメリットがある。
さらにポイントを挙げれば、汎用的かつタブレットらしい操作性を持ったUI(ユーザーインタフェース)であり、誰にでも使えることがよい業務アプリに共有することだとしていた。
以上、約500社のiPad導入事例を見てきたインフォテリアによる「iPad導入が成功する5つの条件」を紹介した。
iPadのようなタブレット端末は、全てがPCに置き換わるとまではいかなくとも企業のITインフラとして着実に普及してきている。もしiPadを自社でも活用してみたい、そう思った場合にはこの5つの条件を参考にしてみてはいかがだろう。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.