実は私、学生時代に英会話スクールの勧誘に乗って入会してしまったことがあります。恥ずかしながら、営業の誘い文句に乗ってローンまで組んでしまいました(まさに若気の至りです)。当時、塾講師のバイトをしていてお小遣いにしては少し多めの収入があったこともあり「毎月○千円なら、出せる」と思って入会したのです。予算思考に基づけば「収入の範囲で支出した」のですから、あながち間違いではありません。
あの時習った英会話は、新婚旅行のときにホテルのフロントに苦情を言ったり、外国人に道を聞かれたり、ごくごくまれに英語のビジネスメールに対応したり……それなりに生かしている瞬間はあります。しかし、毎月毎月バイトをしてまで支払ったお金に見合う成果か? と聞かれると、自信を持って「いいえ」と言えます。
理由は単純です。よく考えれば、海外ホテルのフロントに苦情を言ったときは日本人スタッフに言えばよかったし、道案内のときは結局「すみません、この辺詳しくないんです」と英語で言っただけだから彼の役には立っていなかった。英文メールも辞書があれば何とかなったはず。英会話の経験は「必要なかった」わけです。
一方で、それでも高額の料金を払って英会話やTOEICの勉強をしている人がいます。例えば「TOEICスコア730点が課長職昇進の条件」となっている企業が最近は増えているのですが、この要件を満たすべく毎夜頑張っているビジネスパーソンの中には、お金をはたいて学校に通っている人が多いと思います。
この場合は私とは違って、英会話の習得が年収アップに直結しているわけです。課長職になって年収が100万円増えるなら、英会話学校に50万円払っても半年で回収できますから、この50万円はムダではありませんよね。
この「元を取る」という発想が「投資思考」です。
投資思考=「将来いくら戻ってくるか?」という観点から支出を判断する考え方
私が身に付けている2万4000円の寝間着は、実は「リカバリウェア」と呼ばれる休息時専用のウェアです。疲労の回復に高い効果があり、アスリートなども愛用している人が多いもの。それまで私はひどい腰痛と肩こりに悩まされていて、月に数回、カイロプラクティックに通っていました。その店は良心的な価格設定だったのですが、それでも施術料で、多い月で1万円のお金が飛んでいくのはつらいものがあります。
友人が使っているのを聞いて「ああ、これは確かに効果があるんだろうな」と思って、思い切って購入を決意しました。リカバリウェアを着るようになってまだ1カ月も経っていませんが、慢性的な腰痛がなくなり、カイロに行く必要はなくなりました。あと2カ月も着続ければ、立派にカイロ代の「元が取れる」計算になります。
2万4000円は自分の健康維持のために払っていた投資額として、カイロに支払う施術料を超えるパフォーマンスを見せているわけです。パジャマとしては高すぎるように見えた支出も、実はとても有意義だったというのは、そういう理由からです。
これが国家予算の話なら「ムダを削減せよ! 増税はその後だ!」と誰もが叫ぶのですが、自分のことになるとなぜか「収入>支出」という理由だけで、これらの無駄な費用が当たり前のように見過ごされてしまいがちです。
一方で「営業マンの話し方セミナー、受けたら成約率上がるかも。……でも3時間で2万円も取るのか。ムリだな」と、表面上の金額だけで大事な機会を逃す人も、たくさんいるだろうと思います(すべての高額セミナーを肯定しているわけではありません、念のため)。
そのお金、本当に元が取れるのか? そういう観点から日々の支出を考えてみることも、大事ではないかと思います。
※この記事は、誠ブログの公認会計士まーやんの「ロジカるつぼ」:その自己投資にいくらつぎこむか?予算思考と投資思考の話より転載、編集しています。
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