労働者の給料は、労働者に対する需要と供給の関係で決まっている、と考える説です。一般的な需要と供給の法則の考え方を給料にも当てはめているわけです。
例えば、景気がよくなり企業がもっと人員を増やしたいと考え募集も増やせば、労働者への需要が大きくなります。これに対して、労働力の供給量(労働者の数)が変わらなければ、需要と供給の法則から、値段が上がっていきます。つまり、給料が上がっていくというわけです。
反対に、不景気で企業が労働者の募集をしなければ、労働力への需要が下がります。そのため、需要と供給の法則に照らし合わせると価格が下がる(給料が下がる)というわけです。
これは年功序列型の右肩上がり給料を説明する仮説です。
なぜ、若手社員よりも年配社員のほうが給料が高いのか? 同じような仕事をしていて、会社に対する貢献度は同程度だったとしても、若手社員のほうが給料が安いのはなぜか? それは、若手社員が会社に「貯金」し、年次が上がってからその貯金を引き出しているようなものだ。こう考えるのがこの仮説です。
会社は人材を育成するのに膨大なコストがかかります。そのため、せっかく育てた人材がポンポンと他社に転職してしまっては、単なる育成ボランティアになってしまうからです。それを避けるために、人質ならぬ「カネ質」を取ります。若手社員は途中で転職してしまうと、それまで預けた「貯金」を受け取れないことになりますので、「カネ質」を取り戻すために長く働くようになる、ということです。
これも日本企業の給料が年功序列で、右肩上がりであることを説明している説です。年次が上がるにつれて給料も上がるのは、その労働者の技能(スキル・能力)が上がるからだ、という説です。
上のグラフを見てください。正社員(全体)の給料構造を見ると、50歳台前半まで上昇しています。
この中で、継続勤務者(転職をしていない人)に限って賃金カーブを見ると、給料の上がり方がより急になっていることが分かります。逆に、転職者の給料の上昇率は全体に比べて小さいですね。このことから、給料は一般的に「労働者の勤続年数の長さに応じて高まる」、つまり「同一企業に長く働いている人のほうが給料が上がる」ということが分かります。
ここから給料の決まり方に対するある考え方が読みとれます。それは「日本の企業では勤続年数が長くなればなるほど、その会社での仕事スキルが上がるから給料が上がる」というものです。
長く働けばそれだけその会社の業務に慣れて、その会社の業務をこなすスキルが上がります。他の会社から転職してきた人は、社会人としての経験は同じでもその会社の仕事には慣れておらず、その会社の仕事をするための技能が習熟していません。だから、勤続年数によっても給料が変わるということです。
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