「不格好経営」――DeNA南場智子氏、ゴールを追える人材こそがグローバル企業家に聞く:南場智子氏【後編】(3/4 ページ)

» 2013年07月31日 11時10分 公開
[まつもとあつし,Business Media 誠]
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DeNAでは人材をどう育てているのか?

まつもと 『不格好経営―チームDeNAの挑戦』で振り返られているように、DeNA自体も創業以来、環境がめまぐるしく変わっていきました。そんな中で「グローバル人材」が重要な役割を果たしていたわけですね。

南場 そうですね。前半でも述べたように、仕事を通じてそういった人材が育ってきていると自負しています。その結果、DeNAだけでしか活躍できない人材はウチにはいないはずです。ウチで仕事ができるなら、どこでもできるはずだと。ウチだけでしか通用しない仕事の仕方をしないというのがポイントですね。

『不格好経営―チームDeNAの挑戦』第8章より抜粋

  1. 全員が主役と感じ、1人1人が仕事やオーナーシップを感じるようなチームの組成、仕事の単位となっているか
  2. チームの目標は分かりやすく、そして高揚するに足る十分に高い目標となっているか
  3. チームに思い切った権限委譲をしているか。信じて任せているか

 あくまで達成されるべきは目標であって、そのための手引き=マニュアルに沿って進めれば良いというプロジェクトはDeNAには1つもありません。ゴールドリブンという考え方で、仕事のやり方は必死に考えてください、という言わば「千本ノック」をみんなやってますから、それが結果的にグローバル人材を育てているということにつながっているのだと思います。

 だから、たとえ海外にそういった人材が出ていって最初は英語で苦労しても、必ずびっくりするような成果を出してきます。

まつもと 逆に言えば、日本の大企業ではマニュアル化された仕事の進め方が幅を利かせている?

南場 そういう面はあるかもしれません。「Know Who」って言ったりしますけれど、誰に頼めばうまくいくとか、その会社独特の仕事の回し方を知っていることで出世したりしますからね(笑)。その企業でしか通用しない方法論が多すぎると思います。でも、それは競争力にはつながらない、成果が出てないから否定されているのです。

 米国では経営トップから事業リーダーまで人材が流動しています。だから、その組織に固定化された仕事の仕方がある訳ではなくて、着任したその日から仕事で成果が出せることが求められている。

 気を付けないといけないのは、たとえベンチャーであったとしても、知らず知らずのうちに、ローカルな方法論が幅を利かせるようになってしまうことがままある、ということです。マニュアル化されることを徹底的に排除する、そこに力を注ぐ、といったことも必要でしょうね。

まつもと なるほど、とてもよく分かります。しかし目標達成に対する強いコミットメントについては、繰り返し『不格好経営―チームDeNAの挑戦』でも強調されていますが、そこには失敗や挫折も伴います。その点についてはいかがでしょうか?

南場 私自身も順調なキャリアを歩んできたわけではありません。失敗したことも何度もあります。だからDeNAのメンバーに対しても1つや2つの失敗ではなんとも思いません。ただ、そこで「逃げ癖」だけがつかないように、そこだけは見ています。全てに立ち向かって、やり尽くしたかどうかということですね。そうであればむしろそれは歓迎です。

まつもと 失敗を奨励するという建前を持つ企業は多いのですが、実際『不格好経営―チームDeNAの挑戦』を読むと、「モバまち」を大失敗させた大塚氏がモバゲープロジェクトに抜てきされ、「怪盗ロワイヤル」を生み出したエピソードなどたくさんの「転んでもただで起きない」事例がDeNAで生まれて来たことがよく分かります。

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