この話をもう1度、具体的な数字を使って解説します。メーカーが行うと、流通するのに本来300円のコストがかかるとします。これを流通のプロがやれば150円でできるとしましょう。そうすると、流通業者はメーカーから流通の仕事を受けることで300円受け取ることができます。でも、流通のプロは効率的なので150円で済む。その差額が卸・小売の利益になるのです。
これは、卸・小売業者は自分で商品を製造しなくても利益を生み出せるというおいしい側面があると同時に、卸・小売業者の利幅にはもともと天井があり、その範囲内でしか利益を稼ぐことができないということを意味しています。
メーカーは、自社の方針によって価値が高い商品を作ることができます。そしてその商品が高い「使用価値」(使うメリット)も持てば、消費者に受け入れられ、売れていくでしょう。
自分で商品を生産し、100の価値を持つ商品でも200の商品でも1万の商品でも作ることができます。
作った商品が売れるかどうかは別の問題として残りますが、少なくともメーカーは利益額の「天井」を自分で設定することができます。メーカーは自分たちの経営努力によって、理論上は利幅を無限に広げていくことも可能なのです。
しかし、流通業者はそれができません。流通販売業者の利益の「天井」は他人に決められているので、いくらがんばっても手数料以上は受け取れません。卸・小売業者が自分たちの利益を増やしたければ、よりがんばってより効率的に仕事をするしかありません。コスト削減しかないのです。
消費者は、その商品の内容や質によって値段が変わるのは「当然」だと思っています。昔だったら「ソニーの製品だから高くてもいいか」、今なら「アップル製は高くても欲しい」と感じます。
しかし、「イオンで買うから高くてもいい」とは思いません。別のサービスがついてくるのであれば話は変わりますが、同じ商品を同じように買うときに「ここだったら高くてもいい」「この店で買うことに意味がある」と感じることはほとんどないでしょう。
だから卸や小売はメーカーに比べて合併することが多いのです。合併して規模が大きくなることで、効率化を図ろうとしているのです。
また、少し前に家電量販店にメーカー社員が「応援部隊」として派遣されることが問題になりました。小売店がメーカーの社員を半ば強制的に店頭に「販売員」として立たせており、これが問題視されたのです。これもコスト削減の一環です。コストを削減することでしか利益を出せないのが流通業者なのです。
理論上の利幅を自分たちで設定できるメーカーより、利幅が他人に決められている流通業者のほうが、結果的に利益を出せる可能性が小さくなるのは当然のことです。給料が安くなってしまうのも当然なのです。
あなたの会社の給料が低い理由
1.ズバリ、あなたの会社の「業績」が悪いから
2.あなたの会社が「工場」を持っているから
3.あなたの会社は「利幅」の天井が決められているから
(次回は、「日本人はサービスにお金を払わない」について)
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