じっくり考えることが当然の質問に対して即答してしまうと、適当に答えている、あるいはまじめに考えていないように見えてしまう。少なくとも、「考えているフリ」はしたほうがいい。今回は、考えているように見えて「頭がいい」とまで思わせる方法を紹介する。
本連載は、松本幸夫氏著、書籍『あなたの話の9割は相手に伝わっていません』(アスコム刊)から一部抜粋、編集しています。
「自分が思うのと、全然違うかたちで伝わってしまっていた」「丁寧に話しているつもりなのに、相手を怒らせてしまった……」そんな経験は、誰でも1度はあるのではないだろうか。
実は、その原因の多くは相手にあるのではなく、自分自身が作ってしまっているのだ。そういう人はこれからも相手を怒らせたり、自分の言いたいことを伝えることができないままだろう。
本書では「相手に伝わらない」あるいは「相手を怒らせる」などの、伝わる話し方ができない人の問題点を指摘し、具体的にどんな言葉で話せばいいのかなど、今すぐに簡単に出来る改善策を詳しく解説。話し方で損をしてきたと悩んでいる人、また、相手にもっと気に入られたいと思う人にも役に立つ1冊だ。
松本幸夫(まつもと・ゆきお)
執筆とセミナーでの講義をメインに活動するコンサルタント。スピーチドクター、NPO法人認定日本プレゼンテーション協会認定マスタープレゼンターの肩書きも持つ。NHK、その他テレビへの出演実績多数。
セミナーは好評で、全国で年間200回以上も行う。リピート率は高く、92%を超えている。
話し方以外のメソッドも定評があり「最短でできる人をつくる」をモットーとして、人材育成をはじめ、タイムマネジメント、交渉、プレゼンテーション、営業術など、さまざまな分野の研修や執筆活動を行っている。
じっくり考えることが当然の質問に対して即答してしまうと、適当に答えていたり真面目に答えていないように見えてしまう。そこで少なくとも「考えている」というフリをしなくてはいけない。さらに弊害としては、あまり考えなしに答えると後悔することも多くある。
そこで今回は、考えているように見えて「頭がいい」とまで思わせる方法をお伝えしておこう。
1.意見を振られたら、まずは考えるためのセリフをひと言
自分の言いやすい、口からすぐに出てくるものを決めておくとよい。
「それに関しましては……」
「そうですねぇ……」
「その件については……」
これはそう長くはないが「間」をとるので、「考えている」ように見せられる。
2.ボディランゲージを工夫する
これは「う〜ん」と言いながら「アゴに手を触れる」などである。見ている側からは、たとえ何も考えていなくても考えている「感じ」が伝わる。あるいは「中空に目を向けて、腕組みをする」のもいい。
これは仮に意見を求められていない場合、いつでもやるのはよくないが、参加している会議の最中に行うと「あいつは考えている」というメッセージとして伝わる。
3.大切な意見を言う前に必ず十分に間をとる
「頭がいい」と見せようとする人が陥りがちなのが、間をとることなくやたらにペラペラと話し続けていくことである。
「それはですね、エー、そうそう、それから……」と、次々に「。(句点)」のない話を続けていく。聞くほうもせわしなく感じるだけで、かえって「話がまとまっていない」「思いつき」の感じが強く出てしまう。
また、コミュニケーションはキャッチボールなので、一方的に話す人は自分勝手であり、一緒にいると疲れると思われてしまう。
そこで、話す直前にゆっくりと頭の中で「イチ、ニ、サン」と3秒の間をとってから話してみよう。これで、なりふりかまわず話すことを回避できる。さらに、なぜか落ち着いて考えてから話しているように見られるようになる。
4.相手に質問してみる
これは考えに詰まったときの、危機管理の「技」として覚えておいてほしい。とっさに答えられないときに、自分が「ウッ」「エーッ」と詰まってしまってはいけない。スマイルとともに「君はどう思う?」「あなたの考えは?」「あなたの意見はどう?」と、すぐに相手に質問してしまう。その間にすばやく考えるのもいい。
また、相手が答えてくるので、それに少しだけ自分の意見をつけ加えてもいい。(困った、どうしよう)と思ってもスマイルとともに質問を返す。
「山田さん、どう思う?」
「藤山さんの意見は?」
──答え。
「そうだね。費用は不十分だけど始めてみるのはいいと思うんだ。あとから上に申請して予算を取ってもいいし。僕も実は賛成なんだ。やはり、あとから申請がいいね(そうか。予算が不十分ならあとで申請していけばいいのか。よし、そのまま言おう。助かった)」
丸カッコの中が本音だがそれをそのまま見せてしまうと、とてもしっかりとした人には見られないだろう。
ここは、相手に質問をしてその間に考え、場合によっては相手の意見をあたかも自分の考えのようにしてしまおう。あくまで緊急時の対応だから、乱発するのは良くないが……。
5.声のトーンを下げる
高い声というのは、それだけで信用度を下げてしまう。私たちは、誰でも緊張すると声のトーンが上がってしまうものだ。これは営業の世界であると「買い気信号」の1つとされている。つまり「買おうかな」という気になると、客の声のトーンが上がってくるというのである。
つまり、人は興奮したり感情が高ぶると、声が「上がる」ことで周囲に伝わってしまう。だから、伝わる話ができるしっかりとした人に見られたいなら、緊張したときほどあえて「声のトーンを下げる」、つまり低音で話すように心がけよう。
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