話の中に数字を入れると“それらしく”聞こえるあなたの話の9割は相手に伝わっていません(3/4 ページ)

» 2013年08月09日 11時00分 公開
[松本幸夫,Business Media 誠]

「知的でいい人」と「イヤな奴」の差

 自分を知的に見せることができれば「あの人が話すことだから間違いない」と思われて、さらに聞く耳をもってもらえる。ただし、この見せ方には工夫がいる。あからさまに「俺は知っている」「私は偉いんだ」というのを強調すると、「イヤな奴」という印象を強くしてしまう。

 私が推奨する「知的な人」というのは、相手のことも考えて“好かれる”人。つまり、人柄も含めての「いい人」である。だから、先述のように「ご存知のとおり」とか「ご承知と思いますが」という言い方が望まれることになる。

 ここではもう1つ、専門用語について触れておこう。問題なく使っていいのは、話の聴き手もよく知っているような、いわば“共通語”なら、どんどん使っていい。

 が、あなたが詳しくて、相手はそうでないときが「頭のいい人」に見せるのに注意したいときである。あくまでも、私の研修のなかでの体験である。多くの場合は「ご存知のように」と言ってから、相手の知らなそうな中身を話すようにしている。これをすると、本当は知らないはずなのに、うなずいてくれる人が多くなるのは、前回紹介した。

 まれにではあるが「ちょっと頭のよさを見せておこうかな」などというときは、あえて何も言わずに、いきなり専門用語を口にする。そのすぐあとに、やさしい言葉で言い直すようにしている。

 これも私のケースだが、1日の研修のなかであれば2、3回やれば十分である。あとは聴衆は「さすが」と思って聞いてくれるのである。

 ポイントは、さり気なく話のなかに盛り込むようにすることだ。例えば、

「大切なのはセルフ・ディスクロージャー……。えー、情報開示のディスクロージャーと同じで、自分自身を開示する、さらけ出すことです」

 これは話法にもなっていて、説明したあとに「自分自身をさらけ出すのを、セルフ・ディスクロージャーといいます」の逆の順になっている。つまり、強調したいことをあえて前にもってきてしまう言い方だ。

 これは昔、私のヨガの先生も使っていた、いきなりポンと知らない言葉を出してその後で説明するというやり方である。専門用語や特殊な言葉も、後で説明すると分かりやすいし、「頭がいい」という印象にもなる。

 「体の使い方は“上虚下実”が原則です。つまり上半身、首や肩、腕の力は抜けている“虚”がいいのです。また、下腹や脚といった下半身は“実”で、力が入っているのが全身のバランスがとれた状態なのです」

 という言い方をしていた。説明のあとに用語ではなくいきなり言葉を出して、その後に説明するという言い方だ。

 専門用語は、特に“専門家”“プロ”であることを見せたいなら使うべきである。しかし、さり気なく盛り込むようにしよう。

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