ある運輸機器のプロジェクトでは、その運輸機器を使っている人がどんな生活をして、どんなことを考えながら仕事をしているかを知るように命じられました。
そこでクライアントに頼んで、運輸機器を使う人に密着して日ごろの業務のことから職場での人間関係、家族や人生のことまでさまざまな質問をして現場でしか聞けない話を聞かせてもらったそうです。
これはコンサルティングにおける情報収集での面接調査(インタビュー)の一種ですが、机を挟んでインタビューしているのではなく、「相手にいつも通りに仕事をしてもらいながら」というのがミソです。
あらたまったインタビューでは、どうしても相手も構えたり、外向きの発言をしてしまいがち。でも、密着しながら話を聞くのなら自然にホンネが出てくるものです。
そこで気付かされたのは、2次情報ではなく自分が現場に行って自分の足で拾い、自分で見て聞いて感じたり気が付いたりしたことをベースに、思考を深めることの重要さだと言います。
どこかで聞いたことのあるような既存の情報を使ってクライアントに提案をしても、相手が身を乗り出すようなものにはなりません。
このようにお話すると「え、マッキンゼーってそんな泥臭いこともするのですか?」と、意外だという反応をする人もいるのですが、数あるコンサルティングフォームの中でもマッキンゼーはすごく汗をかく会社かもしれません。
機能的なオフィスでスマートに仕事をこなす。そんなイメージからすればこうした行動は確かに意外かもしれませんが、マッキンゼーがクライアントに提供するのは、ただの机の上の分析ではなく「実際に現場レベルで実行でき、最終利益(ボトムライン)でインパクトの出せる」バリューのあるものです。つまりクライアントにとってバリュー(価値)のあるものかどうか、が重要なのです。
それなのに、クライアントの「困っている状況」を実感として共有もせずに、どんな問題解決も提言もできません。いい解決策だけど現場では誰も見向きもしない、というようなアウトプットをして「クライアントのことを第一に考えています」とは言えませんよね。
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