「君はボールを投げたら拾ってくるワンコ。それだけ」――ぶら下がり社員を変えたひと言続「新・ぶら下がり社員」(1/3 ページ)

言われたことはきちんとこなすけど、それ以上はやらない。頑張らない。そんなぶら下がり状態に葛藤を持ちながら日々を過ごしていたある日、上司や先輩社員の一言がきっかけでまた仕事を頑張る決意ができた。その一言とは……?

» 2013年09月30日 12時00分 公開
[上口翔子,Business Media 誠]

新・ぶら下がり社員とは

会社を辞める気はない。でも、会社のために貢献するつもりもない。そんな30歳前後の社員のことを、本連載では「新・ぶらさがり社員」と呼ぶ。


『「新・ぶら下がり社員」症候群』 『「新・ぶら下がり社員」症候群』(吉田実・著、東洋経済新報社、本体1575円)

 「辞めません、でも頑張りません――『新・ぶら下がり社員』から2年、彼らはどうなった?」を読んだ友人から、「やばい、まさに自分はぶら下がり社員だよ(笑)」というメッセージをもらった。しかも1人ではなく、同様の内容を複数人から。

 実際に筆者も数年間ぶら下がり状態だったわけなので、その気持ちは非常によく分かる。むしろ今の状態で問題がないのなら、ぶら下がり社員でいてもいいのではないかとさえ思っている。

 本企画を通じて、世の中にはぶら下がり社員が一定数存在すると改めて確信した。そして、ぶら下がり状態から脱したいと思っている人がいるのも事実だ。

 今回は、『「新・ぶら下がり社員」症候群』筆者で、人材育成企業シェイクの吉田実代表との対話を通じて、ぶら下がり社員が上司や先輩のアドバイスで立ち直れた事例を紹介したい。読者の中にも、ぶら下がり社員から脱したいと思っている人、そしてぶら下がり社員を部下に持つ上司という立場の人がいるだろう。上司と部下が、互いによい関係を保ちながらチームワークを向上させていく、そのヒントとなれば幸いだ。

私がぶら下がり社員になったキッカケ

上口 実は私もぶら下がり社員だったんです。今は先輩や上司のおかげでまた頑張ろうという気持ちを持っていますが、それまではまさに前回教えて頂いた「新・ぶら下がり社員チェックリスト」に当てはまるといいますか……。当時を振り返りながら、普段吉田さんが講師をするような形でアドバイスをもらってもよいでしょうか?

吉田 ええ、いいですよ。

上口 では、私の話をしますね。アイティメディアに新卒入社して、今年で6年目です。これまで3つの編集部に所属してきました。仕事に対してあきらめを持ったといいますか、ぶら下がったキッカケは、2つ目の編集部への異動を命じられたときです。

 1つ目の編集部では立ち上がったばかりのサイトを担当していました。編集も営業も協力して「一緒に業界を盛り上げていこう、サイトの規模を大きくしていこう」という共通した目標があり、チーム一丸で頑張っていました。私もその目標に向けて、それこそ平日も休日も関係なく、時間さえあれば仕事のことを考えて、少しでも貢献したいと思いながら仕事をしていました。

 自分のキャリアの面では入社して1年半が経ち、一つの大きなコーナーを任せてもらえました。それまでは先輩や上司に助けられてばかりだったので、少し一人前になったかな、と思った矢先です。全く別分野の編集部への異動辞令が出ました。社内事情にうとい自分でも分かる、「玉突き人事」というやつです。会社員なのでしょうがないと自分を納得させる一方、今の編集部には自分は必要ないんだ、もうこのサイトの編集には関われないんだ、という悔しさがありました。

 異動先の編集部では、振り返ると我ながらひどいなと思う働き方でした。あらかじめ言っておくと、編集部のメンバーは皆さん優秀で、いい方々ばかりでした。ですので、人間関係のストレスなどは一切ない恵まれた環境でした。ただ自分の仕事に関しては、完全にロボット化した機械的作業だけでした。

 上司はすごくマネジメント能力に長けた方で、半期に一度行う面談では私のキャリアアップを考えた目標を一緒に考えて設定してくれました。私は上司の期待に応えようと、例えば月に6本の連載記事を出すという目標であれば、8〜10本は出す、というように定量的に判断できる部分だけはきちんとこなしました。

 一方、経営のことなど、自分には関係のないことについては一切何もしませんでした。2つ目の編集部がある部署は社内でも売り上げのシェアトップともいえる稼ぎ頭で、経営層も交えての重要な会議が定期的に行われていました。あるとき、上層部、営業部、編集部など関係者が一同にそろう会議があったのですが、「このサイトが5年後、10年後に成長しているためのプランを各自いくつか持ってくること」と言われていたところで、私は1つも案を持っていきませんでした。営業部の人にすごい怖い目でにらまれたのを覚えています。そのくらい、経営については関心がありませんでした。

 そして2つ目の編集部に在籍して約1年半、やはりどこかで「このままではダメだ」という気持ちがありました。しかしそうは思っていても変えられない。それこそ毎日スーツを着て決まった作業だけこなして、会社で一言も話さず(隣に座っている人とのやりとりでさえ全てメール)家に帰る――。そんな日が続いていました。

 1つ目の編集部時代の上司には、何度か相談にのってもらいました。いつかは前の部署に戻れるかもしれない、でも今すぐには無理だから、それまでは今の部署で迷惑がかからない程度に頑張ろう。そう思っていたとき、社内公募がありました。現部署の「誠 Biz.ID」を担当する編集記者を社内で募るというものです。

 アイティメディアはBtoB、BtoC向け媒体がいくつかありますが、私はそれまでずっとBtoB分野の編集をしてきました。誠 Biz.IDがメインとするコンシューマ向けコンテンツは未知の世界です。誠 Biz.IDの記事はいち読者として読んだことはありましたが、そこの編集部で自分ができることはあまりイメージできません。ただ、今の自分の環境を変えるのにはちょうどいい機会かもしれない。そんな理由で応募しました。締め切り当日まで悩み、前の部署の編集長にも相談をして、とりあえず挑戦だけしてみようと決めました。どうせ変えるならと、家も引っ越ししました。とにかく環境を変えたかったのです。

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