以前、こんなことがあった。
宅配便のドライバーが、荷物を配達に来たついでに、「今、こういうの、やっているんです」と旬の果物の通販チラシをくれた。たまたま買おうと思っていたものだったので、せっかくだからこのドライバーの成績にもなればいいな、と申し込んだ。到着した果物はおいしかった。
しばらくして、また荷物の配達でこのドライバーがやってきた。彼は、私からハンコをもらいながら、「先日は、申し込んでくださってありがとうございました。届いた果物、いかがでしたか?」と尋ねた。「あ、あれ、すごくおいしかったです。よかったですよ」と伝えると、満面の笑みで、彼はこう言った。「僕たちは配達しているだけで、中身を見たり食べたりすることはないんですけど、自分が紹介したものだから気になっていました。喜んでいただけてよかったです」
彼のように「フィードバックを求める」ことは、自分の仕事の「結果」を知るのに役立つ。
私の仕事でも、研修に参加した人がその後どうなったかを後日訪問などして尋ねることはできる。「あの時、リーダーシップ研修を受講した方は、その後、どのようにご活躍ですか?」と訊いた時に、その上司の方などから「あれから、少し行動が変わったんですよね。これまでは一歩後ろに下がってしまうようなところがあったけれど、今は自分から何か行動を起こそうとしている面が見えてきましたよ」などと言われるとうれしい気持ちになる。もちろん、研修は単なるきっかけに過ぎないのだけれど、それでも、行動変容が見られると言われると、自分の仕事の「結果」を少しだけ見ることができたと思える。
ところで、自分がサービスを提供される側であれば、提供相手にフィードバックすることも意識したい。
「○○さんに作ってもらった資料は、こういう風に活用しているんですよ」と仕事仲間に伝える。
「××さんにアドバイスをもらって買った●●は、ほら、こんな風に使っているの」と薦めてくれた相手にフィードバックする。
それにより、相手のモチベーションが上がれば、より前向きに楽しく仕事に取り組めるようになる。相手がさらにいい仕事をするようになっていけば、巡り巡ってその結果を私たちもまた享受できる。
グローバルナレッジネットワーク株式会社 人材教育コンサルタント/産業カウンセラー。
1986年上智大学文学部教育学科卒。日本ディジタル イクイップメントを経て、96年より現職。IT業界をはじめさまざまな業界の新入社員から管理職層まで延べ3万人以上の人材育成に携わり27年。2003年からは特に企業のOJT制度支援に注力している。日経BP社「日経ITプロフェッショナル」「日経SYSTEMS」「日経コンピュータ」「ITpro」などで、若手育成やコミュニケーションに関するコラムを約10年間連載。
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