文具クリエイターとの出会いからISOT出展へ――スライド手帳は、こうして生まれた(後編)(2/2 ページ)

» 2013年10月07日 11時00分 公開
[舘神龍彦,Business Media 誠]
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小さなブースに工夫をこらしてアピール

Photo ISOT 2013のスライド手帳ブース。ネット媒体やテレビが取材に入った

 ISOTは文具メーカーが出展し、文具の問屋や販売店の担当者が訪れて商談をするためのイベントで、雑誌やテレビで取り上げられる機会も増えている。そこに出展するというのは、メーカーとしてバイヤーや販売店にアピールし、また同業他社にも広く認知してもらい、最終的には商談につなげて扱ってもらう店舗を増やすことが目的となる。

 ISOTには出展料がかかる。その基本単位は1コマ。これは6×3メートル程度の広さのブースで、これには3日間で70万円弱の出展料がかかる。スライド手帳を販売するあたぼうは、35万円ぐらいでこの半分ほどのスペースに出展することになった。この2分の1コマにはパーテションと看板、台などがついており、展示用品の基本セット(15万円ぐらい)が別途必要になる。

 これ以外の装飾は、コストを削減するために工夫を凝らした。例えば、大型液晶テレビを友人から借り、ここにPCを接続して説明用の動画(YouTube)を流すことにした。さらに3日間の会期中は、手帳好きの仲間たちがブースの接客対応を手弁当で手伝ってくれたという。

ISOT出展でメディア露出も取扱店も増加

 スライド手帳のあたぼうブースには、会期中にさまざまなメディアが訪れた。Webや紙のメディアだけでなくテレビの取材も入り、「おねがいランキング」(テレビ朝日)にも登場した。

 ISOTへの出展は、本来の目的である取り扱い店舗の増加にもつながった。関西の大手文具店「ナガサワ」にサンプルを送った結果、グループの3店舗で扱うことが決まったという。

 商品を開発し、ブラッシュアップし、ラインアップをそろえ、雑誌やテレビに登場。そしてISOTにも出展したスライド手帳。佐川氏によればトータルではまだ黒字になってはいないが、今後も製品をブラッシュアップしながら提供し続けるという。


 今、ものづくりは大きな転換期を迎えている。アイデアを思いついたらソーシャルネットワークで仲間を集め、3Dプリンタでプロトタイプをつくり、クラウドファンディングで資金を集める――といったことが可能になり、昔に比べて生産のハードルが下がっているのだ。

 そんな中、佐川氏やアベ氏のように、自ら文具を開発する小さなメーカーはたった今この瞬間にも胎動し始めているかもしれない。2014年のISOTでは、第2、第3の佐川氏やアベ氏に会えるかもしれない。

Photo 2014年のISOTのコマ予定。すでに出展を決めているメーカーもある。来年注目を集めるメーカーはどこか?

著者紹介:舘神龍彦(たてがみ・たつひこ)

 手帳評論家・デジアナリスト。最新刊『使える!手帳術』(日本経済新聞出版社)が好評発売中。『手帳カスタマイズ術』(ダイヤモンド社)は台湾での翻訳出版が決定している。その他の主な著書に『手帳進化論』(PHP研究所)『くらべて選ぶ手帳の図鑑』(えい出版社)『システム手帳新入門!』(岩波書店)『システム手帳の極意』(技術評論社)『パソコンでムダに忙しくならない50の方法』(岩波書店)などがある。誠Biz.IDの連載記事「手帳201x」「文具書評」の一部を再編集した電子書籍「文具を読む・文具本を読む 老舗ブランド編」を発売


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