仕組みや制度だけでモチベーションは上がらない――社員を前向きに導くコミュニケーションの全体像ボクの不安が「働く力」に変わるとき(1/2 ページ)

働いていて「よし、やるぞ!」と、仕事へのモチベーションが上がる瞬間は、制度や仕組みよりも、もっと別のものにあります。働く全ての人、特に人事部の方はぜひ真剣に考えてみてください。

» 2013年10月25日 14時00分 公開
[竹内義晴,Business Media 誠]

竹内義晴(たけうち ・よしはる)

 1971年生まれ。経営者、教師、コンサルタント、コーチ、カウンセラーなど、リーダー層を支えるビジネスコーチ。人材育成コンサルタント。

 自身がプレッシャーの多い職場で精神的に追い込まれる中、リーダーを任される。人や組織を育てるには、マネジメントの手法だけでは太刀打ちできないことを痛感。優れたリーダーたちが使う卓越したコミュニケーションスキルを学び、実践。チームの変革に成功する。実践の経験から、難しいコミュニケーションスキルを誰もが現場ですぐに使えるようにした独自の手法「トライアングルコミュニケーションモデル」を考案。実践的なコミュニケーション方法を伝えるコミュニケーショントレーナー。

 米国NLP協会認定NLPトレーナー、NPO法人しごとのみらい理事長。著書に『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』(こう書房)、『イラッとしたときのあたまとこころの整理術―仕事に負けない自分の作り方』(ベストブック)がある。

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 先日、ある企業の人事の方から相談を受けました。なんでも、業績が大きく低迷しているために大規模な組織改革を行った結果、社員や不安や不満を抱き、モチベーションが低下。職場の人間関係にも問題が出始めているのだそうです。会社組織全体に関わる、かなり大きなテーマです。

 ここまで大きな話ではなくても、長引く景気の低迷で社員のモチベーションが低下している組織はたくさんあると思います。

 組織に関わる問題を解決しようとするとき、目標管理のような制度や仕組みによって解決しようとする組織もあります。もちろん、制度や仕組みを変えていくことはとても大切なことです。しかし、制度や仕組みだけでモチベーションが上がることはあまりありません(むしろ、「また面倒なことを押しつけやがって……」という感じです)。私自身のサラリーマン時代を振り返ってもそうです。

 「よし、やるぞ!」と、仕事へのモチベーションが上がる瞬間は、「このピンチが機会に変わったのは、○○さんの頑張りのおかげだね」のような、制度や仕組みよりも、上司や身近な同僚とのちょっとしたコミュニケーションの中にあるのではないでしょうか。その小さな前向きな変化が、組織全体へと広がっていくのです。

 そこで、これから数回に分けて、モチベーションが低下している同僚や部下を前向きに導くためのコミュニケーションの流れ(フレームワーク)と、具体的なスキルについてお話したいと思います。

なぜ、コミュニケーションに「流れ」が必要なのか?

 今回は、コミュニケーションの「流れ」についてお話します。

 コミュニケーションスキルというと、「聞く」「話す」「問いかける」のようなものをイメージされると思います。

 コミュニケーションに関する情報はインターネット上にたくさんあるので、これらの情報に触れたとき、「そうだな、理解し合うために話を聞くことは大事だな」「そうか、前向きに導くためにはこう話せばいいのか」「なるほど、5W1Hで問いかけることで、具体的になるんだな」などのように思ったことがあるでしょう。

 しかし、それらを職場で実践しようと思うと、意外と難しいんですよね。「聞く」「話す」「問いかける」のスキルは、それぞれが部分的なので、実際に同僚と会話をする際、何から始めたらいいのか、どう会話を組み立てて行ったらいいのか分からないのです。

 実際、私もコーチングやカウンセリングのコミュニケーションスキルを学んだことがあるのですが、聞き方、話し方、問いかけ方などの個別のスキルは身に付けられても、最も難しく感じたのが「会話の流れ」を組み立てることでした。これは、実践の中で身に付けるしかありませんでした。

 もちろん、最終的には実践で身に付けるとしても、最初に「会話の流れ」の全体像だけでも理解しておけば、少しは関わりやすくなれるのではないかと思います。

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