「相手と合わせ信頼関係を作る」ための最初のステップは「観察する」です。
相手が一言も発していなくても、相手のことを意識して観察することによって、相手が置かれている状況を把握できます。
例えば体調が悪い人は顔色が青かったり、赤かったりしていますし、落ち込んでいる人は声のトーンが低かったり、ため息をついたりしています。苛立っている人は顔の表情が固かったり、何となく殺気立ったりしているのが感じられます。このような顔色や声のトーン、しぐさは意識的にしていることはあまりなく、本人自身も気が付いていません。そもそも、顔色は意識では変えられませんから。
観察することによって相手の状況が「あれ?いつもと違うな」と感じたとき、声をかけることができたら、「○○さんは私のことを気に掛けてくれている」「分かろうとしてくれている」という信頼感を抱くでしょう。
また最初に状況を観察し、把握しておくことは、その後のかかわりによってどのように変化したのかを知る基準にもなります。悩みや不満などを話すことによって肩の荷が降りれば、声のトーンや顔の表情は明るくなってくるもの。最初のネガティブな状況を知っているからこそ、その変化を感じ取ることができるのです。
観察力を強化するためには
相手に興味を持つ(興味を持つと「情報収集アンテナ」が立つ)
「見てみよう」「聞いてみよう」「感じてみよう」と、いつもより少し意識してみる
といいでしょう。
続いてのステップは「合わせる」です。
以前、電話で自社商品のクレーム処理を担当しているオペレーターの人から、顧客との信頼関係を作るポイントを聞いたことがあります。クレーム処理ですから、顧客が電話をかけてくるのは何らかの問題や苦情を抱え、中には感情的になっている人もいます。最初の信頼関係の構築の仕方を間違えると、やれ返品だ、訴訟だと、問題が大きくなりかねない現場です。
「顧客と信頼関係を作るポイントは何ですか?」と伺ったら、「顧客に寄り添いながら、声のトーンや会話のテンポ、言葉づかいなどを合わせていくことです」と教えてくれました。確かに、こちらがトラブルで焦っているのに、のんびりしたテンポで対応されたら、「もうちょっと真剣に対応してくれよ」という気持ちにもなりますね。
「類は友を呼ぶ」という言葉がありますが、私たちは「合う」ということに親近感や信頼感を無意識に抱く傾向にあるようです。例えば初めて会う人でも、出身地が同じだということが分かると急に会話が弾み、お互いの距離が一瞬で縮まりますよね。また、服装や雰囲気、会話のテンポ、趣味や嗜好が自分と似ていると何となく話しやすいです。
「心と心がつながり合った状態」を作るために、この「合う」というのがとても大切です。
相手が明るい表情なら、こちらも明るい表情に
相手がゆっくり話しているのなら、こちらもゆっくりと
相手が興奮しているのなら、こちらも興奮気味に
相手が少し悩んでいて声のトーンが小さめなら、こちらも小さめに
という具合に、相手がどんな気持ちでいるのかに寄り添いながら、体の姿勢やしぐさ、顔の表情、呼吸、声のトーンやテンポ、よく使う言葉の言いまわしなどを相手と合わせて行くといいでしょう。
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