「Eビジネス道場」で得た数々のヒントをもとに、「タオル屋」として商売をいかに成功させるか試行錯誤していきましたが、そのまますんなり何事もうまく運び出した、というわけではありません。
ひと言でいえば、私自身の問題です。徐々に業績が上向き、成果がともなってきても自分の軸はブレブレで、考えもふらふら行ったり来たり。「この先、生き残っていくのに、こんなことをしていて本当によいのだろうか?」といった不安が時々ふっと浮かんできてしまい、パニック障害も一向によくなる気配がなかったのです。
そこから救ってくれたのは、恥ずかしながらわが子の存在でした。親としては、長男、次男を分け隔へだてなく同じように育てたいと考えていました。しかし長男は歩いて5分くらいの近所の幼稚園に通わせていましたが、お金がないので女房に働きに出てもらうことになり、そのため、次男は1時間かけてスクールバスに乗って保育園に通わなければならなくなってしまいました。
スクールバスを見送るとき、窓越しの次男はいつも涙と鼻水で顔をくしゃくしゃにして、「パパ、パパ!」と言って泣いていました。その姿を見ながら、私は「ごめんな、ごめんな」と心の中でつぶやきながら毎日送り出しました。すまないと思いつつも、自分も精神的に弱っており、何もしてやれないことが歯がゆく、苦しい日々でした。
そして2008年に次男が年長組になり、保育園の最後の運動会で組み体操がありました。普通なら、保育園の運動会には、子どもの成長を目にしようと喜んで見に行くはずなのに、もうそれすら楽しくないくらい精神的に病んでいました。楽しいはずのものが何も楽しくない、という精神状態でした。
それでも、なんとか気力を振り絞って女房と女房の母親の3人で足を運んでみると、次男が組み体操のピラミッドの上で「エイ、ヤー!」と言いながら、勇ましく立ち上がっている姿が目に飛び込んできました。
その瞬間、私の両眼から涙がブワーッとあふれ出てきました。「ああ、こいつは毎日泣きながらバスに乗って、1時間掛けて保育園に行っていたのに、『エイヤー、エイヤー!』とけな気にがんばっている。この日のために、毎日、先生たちと一緒に懸命に練習していたのか。今を生きていたんだなあ……」そう思ったら、一気に視界が晴れてきました。
「先ばかり考えすぎて過ごしていた自分は何をやっていたんだろうか? 結局、何も前に進んでないやんか」私は迷い道から抜け出す大きなきっかけを、子どもの姿からつかんだのでした。本連載でお話しすることは、こうした迷いと向き合いながら、試行錯誤してきた経過でもあります。
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