連載
» 2013年12月05日 11時00分 UPDATE

ボクの不安が「働く力」に変わるとき:心理的な「真の欲求」を引き出し信頼関係を作る問いのモデル (1/3)

同僚を前向きに導くコミュニケーションスキルの中でも、最も難しいのが「問いかける」ことです。

[竹内義晴(特定非営利活動法人しごとのみらい),Business Media 誠]

竹内義晴(たけうち ・よしはる)

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 1971年生まれ。経営者、教師、コンサルタント、コーチ、カウンセラーなど、リーダー層を支えるビジネスコーチ。人材育成コンサルタント。

 自身がプレッシャーの多い職場で精神的に追い込まれる中、リーダーを任される。人や組織を育てるには、マネジメントの手法だけでは太刀打ちできないことを痛感。優れたリーダーたちが使う卓越したコミュニケーションスキルを学び、実践。チームの変革に成功する。実践の経験から、難しいコミュニケーションスキルを誰もが現場ですぐに使えるようにした独自の手法「トライアングルコミュニケーションモデル」を考案。実践的なコミュニケーション方法を伝えるコミュニケーショントレーナー。

 米国NLP協会認定NLPトレーナー、NPO法人しごとのみらい理事長。著書に『「職場がツライ」を変える会話のチカラ』(こう書房)、『イラッとしたときのあたまとこころの整理術―仕事に負けない自分の作り方』(ベストブック)がある。

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 本連載では、同僚を前向きに導くコミュニケーションスキルを数回に分けて解説しています。前回「相手に合わせて信頼関係を作る4つのステップ」では、いい「コミュニケーション」を取るためのステップについてお話しました。

 同僚を前向きに導くために必要なかかわりや会話の流れである「コミュニケーションU」については、「仕組みや制度だけでモチベーションは上がらない――社員を前向きに導くコミュニケーションの全体像」でお話しています。ポイントは「相手に合わせ信頼関係を築く」「望ましい姿に導く」の2つです。

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 今回は、相手に合わせて信頼関係を築くのスキルの中でも、特に難しいといわれる「問いかけ」のスキルについて、掘り下げていきます。

プロでも難しい「問いかけ」

 先日、ある企業で管理職をしているAさんからこんな話を聞きました。

 「部下が自分で考え、行動できるようにするためにコミュニケーションの勉強をしています。参加しているコーチングスクールでは、相手の気付きを促すために必要なのは質問だ。質問の質がコーチングの質だといっていいと教わりました。しかし、いつ、どんな質問をしたら部下にとって効果的に働くのかが分からないんです。そのため、話はいつも脱線して、自分でも何をしたらいいのか分からなくなってしまいます」

 それを解決しようと、Aさんはさまざまな質問を紙に書き出し「問いかけリスト」なるものを作ったそうです。しかし実際の会話は一瞬、一瞬で変わっていきます。リストを見て、どの質問が適切なのかを瞬時に判断しながら問いかけるのは想像以上に難しく、Aさんは「コーチングって難しいなあ」と感じるようになったそうです

 「問いかけ」は相手が言葉にできていないことを考えるきっかけを作り、思いを共有しながら信頼関係を作っていくための有効な手段と頭では分かっています。しかし、実際のコミュニケーションで使うのは、プロのコンサルタントやコーチ、カウンセラーでも難しいスキルといわれていました。しかも、「なぜ」「どうして」「何ために」など、下手をすると尋問のようになってしまい相手を傷つけてしまうため、かなりの熟練が必要でした。

 何の戦略もなく問いかけるのは、とても難しいのです

「問いかけ」効果のシンプルな本質を知る

 「ドリルを買おうとしている人は、ドリルが欲しいんじゃない。本当は穴をあけたいんだ」……この話は、セールスやマーケティングの分野で、顧客の「本当の思い」を知ることの重要性を伝えるためによく使われる話です。

「どのぐらいの板の厚みで」「どのぐらいの穴を開けたいのか?」「そもそも、ドリルじゃなければいけないのか?」……ドリルが欲しい(ドリルがなくて困っている)という顧客に、そのままドリルを売ってはいけない。さまざまな角度から問いかけることによって、顧客が本当に求めている「真の欲求」が何かを知り、それに最適な商品やサービスを提案することで、顧客の信頼を得ることができるのだと。ドリルは手段、穴をあけるのが目的。条件によっては、ドリルよりもキリのほうが穴をあけるのに適している場合もあるでしょう。

 同僚を前向きにするコミュニケーションのポイントも、実は、これとまったく同じです。

 同僚は仕事の中で、「思ったような成果が出ない」「人間関係で悩んでいる」「部下が望むような行動してくれない」など、さまざまな悩みや不安、困ったことを抱えています。表面的には、そのような言葉を使っていても、その背景には、「本当は○○を得たい」「本当は○○がしたい」など、同僚の「真の欲求」が隠れているはず。

 人が感情や思考を抱く心理的な背景を突き詰めて考えてみると、何かを「得たい」か「失いたくない」かのどちらかです。それが得られない、もしくは、失いそうになるとき、人は悩み、不安を抱くのです。

 しかし本人は多くの場合、「困っている」ことに意識が向いているので、その背景に「本当は○○を得たい」「本当は○○を失いたくない」気持ちがあること自体に気が付いていません。

 もし相手が抱いている「真の欲求」を聞き出すことができれば、あえて「信頼関係を作ろう」としなくても、自然な形で「○○さんは私の本当の気持ちを分かってくれた」と、信頼関係を作ることになります。

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