周りに流されるぐらいなら「孤立」を選ぶ一流の働き方

一流の人間はやる気をなくしてしまう状況でもへこたれることがない。むしろ、それをチャンスと受け止め、新たな自分への変化のときと考えるのだ。

» 2013年12月12日 10時00分 公開
[川北義則,Business Media 誠]

集中連載『一流の働き方』について

 本連載は、2013年11月26日に発売した川北義則著『一流の働き方』(アスコム刊)から一部抜粋、編集しています。

 なぜあの人の仕事は、いつもうまくいくのか? 一流は困難なときこそ楽天的である。「忙しい」は、二流の口グセ。「努力」は、他人に見せたときに価値を失う。仕事ができる人は、孤独を恐れない――頭角を現す人にはこのような条件を持っている。

 本書は、人気ベストセラー作家が「頭角を現す人」の究極の仕事術を39の条件にまとめ語り尽す一冊。あなたも「あの人のようになりたい」といわれる人間になろう!


 働く環境は常に順風満帆というわけにはいかない。ときに、逆風に向かって進路をとらなければならないこともある。組織の一員として従わなければならないことがあるのは分かっていても、どうしても納得できないことはあるだろう。

 そんなとき、一流の仕事人は毅然として「NO」といえる強さがある。そのことによって、自分が望まないポジションに追いやられることがあっても甘んじてそれを受け入れるのだ。だが、決して戦意喪失はしない。

 私自身の経験からもいえることだ。

 新聞社の記者時代、私は文化、芸能の担当記者として働いていたのだが、あるとき、私から見れば不当な人事異動で新聞から書籍出版セクションに回された。

 今思い起こすと、上司から見て私は「かわいい部下」ではなかったと思う。「飲みニケーション」の付き合いも悪かったし、たとえ上司であっても、仕事上のことでは、理の通らないことには真っ向から反発した。「このほうが読者に受ける」と思えば突っぱねた。

 それは私がわがままだったからではなく、仕事においては会社での立場よりも、会社の利益に寄与することを優先した結果にすぎない。だが、自分でいうのもおこがましいが、私は上司から見て「かわいい部下」ではなかったが、「デキる部下」だったと思う。そのくらいの自信は持っていた。それが上司の怒りに触れたのだろう。

 だが、私は腐ったりはしなかった。むしろ書籍という新しい分野を面白そうだと感じたものだ。「人間至るところ青山あり」の気概で、新セクションの仕事に臨んだ。「世の中は広い。死んで骨を埋める場所などどこにでもある。だから、何かを成し遂げるためにならどこにでも行って、大いに活躍するべきだ」という気持ちだった。

 当時の社内では少数派だった信頼のおける上司や気心の知れた同僚、後輩は、同情しきりだったが、私は淡々としたものだった。私が一流であるかはさておき、普通なら「不遇」と感じ組織やまわりの人間を恨むような場合でも、一流の人間は、やる気をなくしてしまう状況においても、へこたれることがない。むしろ、それをチャンスと受け止め、新たな自分への変化のときと考える。どんなに才能があっても、どんなに教養や知識が豊富でも、「不遇」を悲観するような人間はしょせん、大した器ではない。

粘り強く続けられる人が成功する

 実際、私はこの時期に学んだこと、培った人間関係のおかげで後に出版プロデューサーとして独立できたし、幸いなことにミリオンセラーを何点も世に出すことができた。

 もし私が「不遇」を恐れ、尊敬できない上司に心ならずも尻尾を振るような生き方をしていたら、そんな人生はなかったと思う。そして、私は「弧立」や「少数派であること」も恐れなかった。腐らずに、新セクションでも粘り強く仕事に相対したゆえの結果だと思っている。

 『孤独が一流の男をつくる』(アスコム刊)という拙書があるが、孤独であること、周囲から孤立することを恐れる人間は、どんな分野であれ、大きな成果を上げることはできないだろう。アメリカのウォール街で巨万の富を得た投資家ジム・ロジャーズ氏は、こんなことをいっている。

 「仕事をやり続ける、学び続けるというのは、狂気と紙一重ともいえるくらいのこだわりです。別の言葉に置きかえるなら、『粘り強さ』でしょうか。世の中には、とても頭がいいのに成功していない人たちがたくさんいます。容姿端麗でも、才能に恵まれていても、学歴が高くても、まったく芽が出ない人がいる。成功するのは、粘り強くやり続けられる人だけです。だからあきらめてはいけません」(『プレジデント』2013年9月30日号)

 自分の信念が明確なら、「不遇」や「雌伏」を恐れることなく、粘り強く生きていかなければ成功は得られないということだ。ロジャーズ氏が大成功を収めた株式投資の世界には、こんなことわざもある。

 「人の行く裏に道あり花の山」

 一流の仕事人は、群集心理に安易に流されることはしない。今やアメリカのメジャーリーグでも、押しも押されもせぬ超一流であるイチロー選手だが、日本のオリックス球団時代の有名なエピソードがある。

 「それでは一軍には残れない」

 彼の独特なバッティングフォームを見て、当時の監督がフォーム改造を進言した。しかし、イチロー選手は変えなかった。「変えるくらいなら二軍でけっこうです」と言い切ったという。後に監督が代わり、そのフォームを認められ、大打者への道が開けた。もし、監督交代がなかったら、もし、イチロー選手が前監督の指示に従っていたら、一体どうなっていただろうか。彼は自ら「不遇」を選んだのである。その先に超一流への道が開かれた。

 サラリーマンなら、たとえ上層部の意向に逆らったために、露骨な懲罰人事の被害者になったとしても、それを逆手にとって「会社を利用してやろう」くらいの覚悟で働いてみればいい。それが一流の働き方でもある。

 かつて三井物産の社長だった八尋俊邦氏も、若いころ左遷を経験している。そこでめげずに頑張ったからこそ、あの大会社の社長になれたのだ。「雌伏のとき」を経験することが、新しい「学びの場」にもなるのだ。「雌伏」をありがたいと思えるようになればいい。

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