続いて、(3)の継続力、すなわち何かをやり続けられる力があるかどうかです。
たいてい、人間は次から次へと新しいことをやりたいと思っているものです。しかし、さまざまな状況に直面しながらも、逃げずに粘り強く前進しなければならない局面がビジネスでは当たり前です。
3〜4歳から大学を出るまでなど、本当に小さいときから何かを継続してやり遂げてきている人はここの評価はクリアです。2〜3年なら誰でも続けられるかもしれませんが、20年近く何かをやり続けるのは大変なことです。困難に直面したことも放り出したくなったことも、何度もあるはずです。そうしたことを乗り越えてきた人は、やはり一定の力を持っているものです。
しかし、そういった特別な経験がある場合はまれで、通常は質問への返答によって継続力の有無を見抜くしかありません。これは、たいへんむずかしいことです。「君は飽きずに何かを続けられるタイプかな?」と聞けば、誰しも「はい、続けられます」と答えますが、これでは、本当に継続力があるかどうかは分かりません。
そこで、本音を引き出すために逆の点から質問します。「優秀な人って、どんどん新しい事に挑戦したいものだよね? 君はどう思う?」のような質問です。もしここで相手が肯定するようならば、こちらの質問意図にただ合わせた答えを言っているだけで、本当は継続力がない可能性が考えられます。本当に忍耐力があるならば、この質問への答えは単純なYESではないはずだからです。
このような方法で、継続力を判定していきます。
そして、(4)のリーダーシップです。
学生団体やサークルの部長をやっていることを自慢気に話す学生がいます。こうしたことを評価する企業もあるかもしれませんが、私はあまり高い評価点だと考えていません。
学生団体の長を務めることも重要ですが、やはり大学での学業にいかに集中していたかが気になります。何のために大学に通っているのか明確に意識して入学当初の目標を達成することが重要ではないでしょうか。私がリーダーシップがあると感じられるのは、当事者意識のある人です。
人任せではなく、「自分はこのように変えたほうがいいと思ったので、そのためにこのようなアクションをとった」「自分は、これから日本人としてこういうことをやってみたい」という具合に、自分を主語にして語れる人です。
依存心が強い人は、他責に走ります。しかし、当事者意識がある人は自分に目を向けることができます。そういう人にこそ、リーダーシップが育つと思っています。
逆に見ていないのは、年齢や国籍、性別など。日本の企業ではチェックしているかもしれませんが、外資系企業では基本的にはノーチェックです。先入観が入るので、私は履歴書を面接前には見ないようにしていました。
留学経験も特に評価の対象にはなりません。中には堪能になる人もいますが、通常は1〜2年留学したところで、ビジネスで通用するレベルの英語ができるようになることはむずかしいでしょう。
もちろん、バックパッカーで世界一周したようなエピソードも低い評価点です。それよりも1、2カ国を深く見て、生活レベルから政治レベルまで日本との違いと共通点を体感している人のほうに興味をそそられます。
一部の技術系を除いて、新卒には即戦力の能力は求めていません。見ているのは、資質です。「一定レベルの思考力をもとに、前向きに仕事に取り組める」「仕事を通じて自らを成長させることができる」などの資質があるかを見ます。
このような期待感を持たせられる人は、間違いなく選ばれていきます。
山元賢治(やまもと・けんじ)
1959年生まれ。神戸大学卒業後、日本IBMに入社。日本オラクル、ケイデンスを経て、EMCジャパン副社長。2002年、日本オラクルへ復帰。2004年にスティーブ・ジョブズに指名され、アップル・ジャパンの代表取締役社長に就任し、現在、(株)コミュニカ代表取締役。(株)Plan・Do・See、(株)エスキュービズム、(株)F.A.N、(株)マジックハット、グローバル・ブレイン(株)の顧問を務める。私塾「山元塾」を開講。
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