「あらゆる領収書を経費で落とす」ためには、重要な「条件」がある!知っておきたい領収書の常識(2/2 ページ)

» 2013年12月20日 11時20分 公開
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納税者側が「汗」をかいて立証しなければならない

 領収書があれば経費で落ちるからと、何でもかんでも領収書を集めたとします。仕事で使ったかどうかあいまいなものも、「まあいいか」とすべて経費に計上する……。これはよくありません。税務署に何を言われても反証できる根拠が必要になるのです。

 例えば領収書のない交通費であれば、何日に、どこへ、どんな用件で行ったか、運賃はいくらか、などを一覧表にしておく必要があります。「渋谷―池袋」のような短距離の交通費までは領収書を取れませんので、このような一覧表を作成しておくわけです。手間は掛かりますが、こういう「汗」をかかないと、経費とは認めてくれません。

 もちろん、長距離の交通費は領収書が出ます。航空券はチケットレスになりつつありますが、搭乗券は残りますので、それを保存しておけばいいでしょう。会食なども、明らかに仕事関係者と行ったことが分かるようにしておかないと、「ご夫婦でお食事されたのではないですか」と突っ込まれます。この場合は、スケジュール帳を見せられる状態にしておくなどの工夫が必要です。打ち合せをしたのであれば「会議録」のようなものを作っておくのもいいでしょう。

 また、例えば文筆業、ライターなどの方が本を買った。これは基本的には必要経費です。ただし、経済関係、IT関係の執筆をしている場合、何冊もの女性誌を購入していたとなるとどうでしょう。

 この場合は、その女性誌に「ネタ」があることを説明できなければなりません。そうした説明責任は、常に納税者側にあります。そして説明するためには、説明資料を用意しておく必要があるのです。この場合であれば、ネタにして書いた原稿や企画書を用意しておくわけです。これはなかなか大変なことですよね。

 納税者も「汗」をかかなければいけないというのは、そういうわけです。税務署員も人間です。

 「この納税者は、なかなか誠実だな」と思えば、あまり厳しくは言いません。しかし、自宅兼事務所の家賃をすべて経費計上していたら、他の領収書まで疑われてしまうのです。「家計で使っているお金を、会社で使ったことにしているのではないか」というわけです。

節税と脱税のボーダーラインはどこにある?

 本連載は、フリーランスのライターである鈴木ヒロシさんと、税理士の梅田(私)が主な登場人物です。

 基本的に鈴木さんが私・梅田に質問し、解説を交えて答えていく、というスタイルで進んでいきます。

 節税は、合法的であれば許されます。けれども、税法に反することであれば「脱税」になります。売上を除外するなどは論外ですが、実際は家庭内の夕食に買った肉や野菜を、仕事で使ったとして経費計上すれば、これは立派な脱税になるのです。

 例えば慶弔見舞金や香典。普通は領収書は出ませんよね。しかし、得意先の娘さんの結婚式にお祝い金を包んだとすれば、立派な交際費です。ところが、従兄弟や兄弟の結婚式へのお祝いは、私用です。この場合の経費計上は脱税になってしまいます。

 同じ「慶弔見舞金」でも、その使途によって、節税になるか脱税になるかが分かれるわけです。繰り返しますが、カギは「仕事で使ったかどうか」です。その経費を使って仕事をしていることが証明できれば、公明正大、「必要経費」として経費で落ちるのです。

 言うまでもなく、経費が増えれば税金は減るわけです。本連載の基となった書籍『経費で落ちるレシート・落ちないレシート』はフリーランスや小さなお店、零細企業を対象に書かれた「節税」の本です。しかし会社の経理マンでも十分に使える内容になっています。なぜなら、サラリーマンの人でも、領収書は日常的に目にするものだからです。領収書に書かれていることや、節税の仕組みを知ることは、ビジネスにおける数字のカラクリが分かることに、確実につながります。

 お金を払えば、そのほとんどの場合でもらえる領収書。しかし、領収書と言っても、手書きから感熱紙の簡単なものまで、形式はいろいろあります。それでも、領収書の仕組みや盛り込まれている情報は、どれも大抵同じです。しかも盛り込まれている情報は、案外、広くて深いのです。

 仕組みが分かれば活用法も分かります。ある意味で、お金の次に大事な領収書。ぜひ本連載を大いに節税に活用してください。

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