「褒めて育てる」ことの欠陥ボクの不安が「働く力」に変わるとき(2/3 ページ)

» 2013年12月26日 11時30分 公開
[竹内義晴(特定非営利活動法人しごとのみらい),Business Media 誠]

「褒める」を「ねぎらい」に変える

 「褒める」が使えないなら、どのように前向きにリードしたらいいのでしょうか。

 私の意見では「ねぎらい」がいいのではないかと思っています。その理由は2つあります。1つ目は、ねぎらいには評価が含まれていないことです。ねぎらいとは「相手の労苦をいたわること」なので、「よい/わるい」という評価がありません。どんなときでもねぎらうことができます。2つ目は、ねぎらいは「称賛」ではないのでわざとらしくなったり、よそよそしくなったりしにくいことです。

 例えばこうです。大きなプロジェクトのリーダーを任されているAさんが、メンバーをうまくまとめることができず、スケジュールも大幅に遅れ、何から手を付けたらいいのか途方に暮れ、1人思い悩んでいるとします。一般的には「失敗は誰にでもあることだよ」「どんまいどんまい」「俺はよくがんばっていると思うけどなあ」のように慰めたり、「リーダーがしっかりしないからダメなんだよ」などのように問題点を指摘したりします。このような言葉で慰められることもあるかもしれませんが、ますます落ち込んでしまうこともあるでしょう。

 では、「ねぎらい」を意識するとどのような言葉になるでしょうか。

 「悩むね」

 「つらいね」

 「しんどいね」

 「苦しいね」

 というような、たった一言でいいのではないでしょうか。ポイントは、「きっとこんな気持ちなんじゃないかな」と、相手がどんな気持ちなのかに思いをはせることです。「ねぎらい」は相手との間に信頼関係を作り、「この人なら分かってくれる」という関係を作ることに役立ちます。

「肯定的な意味づけ」が気づきを生む

 相手との信頼関係ができたら、次は望ましい姿へのリードです。

 ねぎらいの後に、相手の体験に肯定的な意味を付けて、「それって、見方を変えるとこういうとらえ方もできませんか?」ということを伝えてみます。先ほどのリーダーの例なら、

 「悩むね。悩むのは“一生懸命がんばっている”リーダーの証だよ」

 「つらいね。“プロジェクトの成功を願っている”からこそ、抱くつらさだね」

 「しんどいね。“成長しようとしている”リーダーが歩むプロセスだね」

 「苦しいね。神様は”乗り越えられる試練しか与えない”そうだよ」

 このように、「別の枠組みから見ると、肯定的な側面がないか」「将来役立つとしたら、何に役立つか」を考え、伝えます。考えにくかったら、「〜のおかげで」「〜だからこそ」に続く言葉を考えてみるといいでしょう。

 「ねぎらい+前向きな意味づけ」をすることによって、「そうか、これは機会でもあるのだなという」ことに気づけるのです。意識が前向きに方向づけば、問題を解決し、新しい未来を作ることに役立ちます。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ