ファーストラインマネジャーは部下の成長で評価される選ばれ続けるリーダーの条件(2/2 ページ)

» 2014年01月10日 11時00分 公開
[山元賢治,Business Media 誠]
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セカンドラインマネジャーは「全体最適」が重要

 セカンドラインマネジャーになると、ファーストラインマネジャーとは異なる役割を担うことになります。

 ファーストラインマネジャーは直接、部下を指揮する指揮者です。ときには「右に曲がって3歩行ってから左に行け」というくらい具体的に指示を出します。

 それに比べ、セカンドラインマネジャーは、個別に社員を指揮する立場にはありません。全体を監督する役割になります。

 当然、ポジションを務める上でのむずかしさも変わってきます。

 セカンドラインマネジャーは、ファーストラインマネジャーのときよりも部下のケアに割かれる労力は少なくなります。自分が直接ケアする対象がファーストラインマネジャーとなりますが、すでにその面々はある程度の自己管理ができるため、現場社員を個別にケアする場合に比べて負担は少なくなるはずです。

 個別にケアするのではなく、全体の雰囲気づくりをするのがセカンドラインマネジャーの仕事の1つとなります。「やらないといけない」「やれそうだ」「やろう」というような雰囲気を職場につくり、ファーストラインマネジャーの仕事を後押しします。

 当然、ポジションが上がれば責任は重くなっていきます。

 1つは社会的責任です。取締役になると、会社で不祥事があったときなどに賠償責任が発生します。場合によっては退任後でも賠償責任を負わなければならないこともあります。ファーストラインマネジャーは部下に対する責任を負いますが、セカンドラインマネジャーからポジションが上がっていくと、社会に対する責任が大きくなっていきます。

 セカンドラインマネジャー以上になると、自分の責任範囲にある金額、人数のサイズも大きくなります。この社内的な責任から来るプレッシャーも平然と受け止められるようにならなければなりません。

 例えば、1つの課の売上が年間1億円だとすると、10個の課を束ねる部長は10億円の売上を見ることになります。1億円の売上を達成するプレッシャーと、10億円の売上を達成するプレッシャーはまるで違います。このプレッシャーに慣れることです。

 さらに、部長の上の本部長や事業部長といった役職になると100、200億円という売上を見ます。

 私が勤めたのはすべて1000億円規模の企業でしたが、この規模の会社の社長になると、ひと月に80億円、90億円といったレベルの売上が責任としてかかってきます。実際にやってみないと実感がわかないかもしれませんが、毎日億単位のお金がコストとして消えていくなか、これだけの売上を維持し続けるのはなかなかのプレッシャーです。

 セカンドラインマネジャー以上の役職が求めるべきは、個々の成果はもちろんですが、それ以上に部や事業部、または会社全体における総合的な目標達成です。

 部門では、マーケットの大きさや売上予測、納期、価格設定などをデザインして、利益計画を作成します。この計画に近い数値を達成することが、評価の対象になります。

 もちろんオーバーアチーブ(超過達成)するのは悪いことではなく、常に10%上を目指すべきですが、目標の数値から大きくずれているのは問題です。それは、自分たちの計画能力が低いことを意味しています。

 市場の動向も売上の推移も、コンペティターの商品も勉強してビジネスプランをつくったはずです。それにもかかわらず目標値からずれるのは、天変地異でもない限り、プランをつくるときになんらかの問題があったと見るべきでしょう。

 ここで目標値近く、または目標値若干のプラスαで実績を積み上げられるかどうか。それが、ここからさらに「上」に選ばれる人です。

 部下の成長を促すことが求められ、また部下が成長していることが自己の充実感になるのがファーストラインマネジャーだとしたら、会社の成長を求められ、会社の成長が自己の充実感になるのがセカンドラインマネジャー以上と言ってもいいかもしれません。

 同じマネジャーでも、会社組織における意味合いが異なっているのです。

 →連載「選ばれ続けるリーダーの条件」バックナンバーはこちら

著者プロフィール:

山元賢治(やまもと・けんじ)

1959年生まれ。神戸大学卒業後、日本IBMに入社。日本オラクル、ケイデンスを経て、EMCジャパン副社長。2002年、日本オラクルへ復帰。2004年にスティーブ・ジョブズに指名され、アップル・ジャパンの代表取締役社長に就任し、現在、(株)コミュニカ代表取締役。(株)Plan・Do・See、(株)エスキュービズム、(株)F.A.N、(株)マジックハット、グローバル・ブレイン(株)の顧問を務める。私塾「山元塾」を開講。


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