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» 2014年01月15日 11時45分 UPDATE

知っておきたい領収書の常識:イベントや映画代は福利厚生費になる?

福利厚生費とは、「従業員のために支出した費用」です。1人会社の場合はどうなるのでしょう。費用になる条件とは?

[梅田泰宏(公認会計士・税理士),Business Media 誠]

集中連載『知っておきたい領収書の常識』について

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 本連載は、2013年12月21日に発売の梅田泰宏著『経費で落ちるレシート・落ちないレシート』(日本実業出版社)から一部抜粋、編集しています。

 フリーランスや個人事業主として働く人にとって、領収書、レシートは「金券」のようなもの。その支払いが「経費である」と認められれば、支払う税額が減るからです。

 とはいえ、「何が経費になって、何が経費にならないのか」という基準は、誰も教えてくれません。なぜかと言えば、経費で「落ちるか」「落ちないか」という意味では、全ての領収書が「グレー」であり、ケースバイケースで、明確な基準が存在しないからです。

 しかし、実は、「落とすコツ」というものが確かに存在します。それは、具体的なケースを通してのみ、知ることができる種類のものなのです。本書は、「経費」に関する基礎知識を押さえたあと、具体的なケースを通して、経費で「落とせる基準」と「落とすコツ」を解説していきます。

  •  本連載は、フリーランスのライターである鈴木ヒロシさんと、税理士の梅田(私)が主な登場人物です。
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 福利厚生費とは、「従業員のために支出した費用」です。1人会社の場合はどうなるのかなど、さまざま難しい問題ではありますが、基本的には事業主(経営者、役員)に福利厚生費という概念はありません。

 ただホントに小さい会社や個人事業主の場合、経営者兼従業員のような側面もかなりあります。実際に中小零細企業では「取締役営業部長」といったように、いわゆる「使用人兼務役員」の人も少なくない。とはいえ、残念ながら事業主に福利厚生費は認められないのが原則なのです。

 スポーツクラブも同様です。従業員が何人かいて、法人会員という形でスポーツクラブに入会するなら経費に認められるでしょうが、社長、奥さん、従業員1人、の3人がそれぞれ個人会員で入会しているような場合は、判断が微妙になります。おそらく社長と奥さんの部分は、必要経費にならないでしょう。

 まして入会者が社長だけという場合は、まず無理。福利厚生費は「全従業員一律に」という決まりがある上、福利厚生はそもそも役員にはない概念だからです。


shk_hiroshi.jpg 鈴木

でもセンセ、健康でないとちゃんとした仕事はできないですよ。個人事業主やフリーターの場合、病気で倒れたら収入もストップですから、スポーツクラブで健康管理するのは結果的に売上に結び付くと言ってもいいんじゃないですか?


shk_umeda.jpg 梅田

それは、まあ、屁理屈ですね。


shk_hiroshi.jpg 鈴木

へ……屁理屈!


shk_umeda.jpg 梅田

それなら、サラリーマンが健康維持のためにスポーツクラブに入会しても必要経費になるはずでしょ。でも実際は認められない。会社が、従業員の健康管理のために、従業員が等しく活用できるスポーツクラブに入るなら、会社の必要経費になりますが、フリーランスの場合はどんなに甘めに認められても5割ですね。


shk_hiroshi.jpg 鈴木

……たしかに。健康管理は誰でもやることだし、健康管理して仕事に貢献するという因果関係を考えることは、あまりないかも。


shk_umeda.jpg 梅田

そ。だから原則的には事業主は無理なんです。


 先ほども触れたように、法人の場合は入会するなら最低限、法人会員にすること。つまり福利厚生費は、特定の社員や役員だけが享受できるものではダメなんです。従業員がみんな享受できるものでないと認められません。

 すごく厳密に言うと、社員旅行はよほどの不都合がある人以外は全員参加して初めて福利厚生費になるんです。まあ、最近は「社員旅行に行かない権利」とかを主張する人もいるご時世ですが。

 また福利厚生は、社員全員に参加資格があることが前提になります。よって厳密に言うと、部署の懇親会は全社的イベントではないので福利厚生とはいえないわけです。

 ただ、全社で一度に行うことが物理的に難しいために部署単位で実施していたり、参加者は限られるが全社的な目的のために行われているイベントなら、認められる可能性もありますね。

 フリーランスの場合、奥さんがサポートの仕事、お父さんやお母さんが非常勤役員、というパターンが多いでしょう。でも、たった1人という場合もあります。このように少人数の場合は、家族旅行を下手に福利厚生費で落とそうとせず、何とかして仕事と絡めることを考えたほうが利口ですね。事業主や役員と福利厚生費の関係は、かなりデリケートですから……。


shk_hiroshi.jpg 鈴木

さすがのセンセも、「絶対に必要経費になる」とはいえないと……ね。


shk_umeda.jpg 梅田

ですね。税理士さんによっては、個人事業主の旅行代も福利厚生費に乗せる人もいるかもしれないけど。もし私があなたの会社……会社じゃなくてもいいけど、そこの経理顧問になったとして、あなたがお父さんや、しばらくはできそうもない奥さんと一緒に旅行したものを、福利厚生費として申告はできないですね。


shk_hiroshi.jpg 鈴木

しばらく……は余計です。


shk_umeda.jpg 梅田

いやいや、失礼。


 スポーツクラブではなく、例えばコンサートや映画でも、単に遊興のためだけに行ったのであれば経費になりませんが、ライターとして取材に行った、あるいは芸能関係者が「ネタ」を探しに行ったというのであれば、充分に経費になります。

 要するに、カギは「仕事に役立ったかどうか」なのです。福利厚生費には、「従業員の健康管理・維持・モチベーションアップ」といった目的があって、それを果たすことで会社の仕事に貢献するから認められるんです。

 言い換えれば、かなり“縛り”が強い。だから私は、福利厚生費を下手に経費計上するのは得策ではないと思います。

 極論ですが、得意先とスナックか居酒屋に行ったとします。得意先が一緒だから、「接待交際費」という考え方ができます。だけど1人でそういうところに行って「福利厚生費」は、あり得ないでしょ。

 実際には、スナックや居酒屋はともかく例えばキャバクラの経費まで接待交際費というのは、無理があると私は思いますね。本当に接待でキャバクラに行ったのかもしれないけど、フツーはないでしょ、こういうのは。税務署も最初から疑ってかかりますよ。……それこそ、「社会通念上」おかしい、ですからね。

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