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» 2014年01月16日 11時05分 UPDATE

孫正義 奇跡のプレゼン:孫正義に学ぶ、プレゼンで人を動かす法則

プレゼンの達人と呼ばれ、奇跡とも呼べる企業提携を世界中で実現してきた孫正義氏。そのプレゼン戦略はどのように作られているのか?

[三木雄信,Business Media 誠]

連載『孫正義 奇跡のプレゼン』について

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 プレゼンの達人と呼ばれ、奇跡とも呼べる企業提携を世界中で実現してきた孫正義氏。実は、そのプレゼン戦略は非常にシンプルで明確だった。

  • 結論から言え
  • 数字の裏付けを示せ
  • メモは持つな
  • 口調は初めに低くゆっくりと
  • アイコンタクト
  • ユニクロのポロシャツ

 など、誰もがすぐに実践できるものばかり。不可能を可能にする孫正義の伝える技術、その極意を凝縮して紹介する。

 この記事は2011年12月1日に発売された『孫正義 奇跡のプレゼン』(三木雄信著、ソフトバンククリエイティブ刊)から抜粋、再編集したものです。


shk_softbank01.jpg 孫正義氏。写真は年次イベント「Softbank World 2013」の基調講演に登壇した際のもの

 2011年4月20日、孫正義は東京で「自然エネルギー財団」の設立を表明した。この表明をきっかけとして「日本は自然エネルギー発電と原子力発電のどちらへ向かっていくのか」についての論争が、東日本大震災後の日本に渦のように広まっていった。

 このようにソフトバンクが世間の話題をさらうのは、2011年に限ってのことではない。ソフトバンクの創業者であり代表取締役である孫正義は、ソフトバンク創業以来、常に世界と日本の大きな変化の中で「維新の志士」のごとく、さまざまな歴史をつくることに関わってきたのだ。

 孫正義は、プレゼンテーションの達人といわれる。今では、孫正義のプレゼンテーションを聴くために常に会場は満杯になり、インターネットでの動画中継では数万人が視聴する。

 孫正義は、多くの来場者に対して訴えるためだけでなく、一対一での場合でもほとんどの場合、プレゼンテーションを行う。そして、そのプレゼンテーションを受けた相手は、不思議なほど説得されてしまうのだ。

 このプレゼンテーションの力によって、ソフトバンクはiPhoneやiPadのような新しい製品・サービスを一気に広げ、米アップルや米Yahoo!をはじめとする世界中の多くのIT企業との提携を実現してきたのだ。こうして創業から30年余りで売上高3兆円となったソフトバンクの快進撃は、孫正義のプレゼンテーションの力によるものと言っても言い過ぎではないだろう。

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 では、なぜ孫正義のプレゼンテーションがソフトバンクの経営の中で重要な役割を果たしているのか? それは孫正義が、そのプレゼンテーションの力をソフトバンクの“限界”を超えるために使ってきたからだ。孫正義は、常にベンチャースピリットを失わずにチャレンジし続けている。創業以来、PCソフトウェアの流通、Yahoo! JAPANなどのポータルサイトやeコマース事業、ブロードバンド事業、固定電話事業、携帯電話事業とその事業領域を常に拡大してきた。

 このように事業領域を広げていくためには、その事業領域ごとにヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源が必要だ。しかし、ベンチャー企業のソフトバンクには、新規事業領域のための経営資源がほとんど社内になかった。このため、孫正義はヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源をソフトバンク社外から調達することで事業領域拡大を実現させてきた。このときの孫正義の最大の武器がプレゼンテーションの力だったのである。

 もし大企業の経営者であれば、プレゼンテーションを使って社外の経営資源を集める必要はない。たとえ新規事業であっても、社内の経営資源を組み替えるだけで対応できる余力が十分にあるからだ。

 しかし日本では、ソフトバンクのようなベンチャー企業にヒト・モノ・カネ・情報といった経営資源が極端に不足している。日本では、優秀な学生は大企業を志向し、ベンチャーには土地や建物といった資産もない。銀行は実績のある企業でなければ融資をしてくれない。一方、大企業には、ビジネス上の提案という形で、さまざまな情報も自然に集まってくる。そのため、ベンチャーは必然的に大きなハンディを背負っている。

 これを補っていくためには、ヒト・モノ・カネ・情報を社外から調達してくる必要がある。就職活動中の学生に対しても、就職活動中の学生に対しても、「なぜ自社に入社するべきか」を納得してもらう必要があるのだ。また経営資源を多く持っている有力企業に対しては、「なぜ自社と提携するべきなのか」を説得する必要もある。同様に投資家や銀行に対しても、「なぜ出資するべきか」を説き、「融資しても大丈夫だ」と確信させなければならない。

 このときにプレゼンテーションの力が、あらゆる相手を動かすために重要となる。それは、プレゼンテーションが「メッセージを共有し共感」するための最良の手段だからだ。就職活動中の学生は、現在では数百の会社に応募している。学生も「当社は業界最大手で風通しの良い社風が自慢です。また社会貢献や環境保護にも力を入れています」といった企業説明を何度も聞いているはずだ。

 提携を求める有力企業にも、多くの企業から提携の打診を受けているはずだ。資金調達をお願いする投資家や銀行も、数百、数千という「出資・融資してほしい」という話を聞かされたりしているのだ。

 このような有力企業・投資家・銀行の担当者は、「新分野で利益の出る事業です」という説明や資料にはうんざりしている。一体、誰にどんな価値があるのか、どこに成功の根拠があるのか、どれだけの覚悟や思いがあるのか、といったことがさっぱり伝わってこない。ありきたりの説明では、彼らの興味を引き付けることは難しいのだ。

 こうした人々を自社に引き付けるためには、「メッセージを共有し共感」してもらうことが何より重要だ。孫正義のプレゼンテーションは、パートナーにしたい相手や社外資源の協力を得たい相手に対し、「メッセージを共有し共感」するために使われている。このため孫正義のプレゼンテーションでは、一般的な経営戦略論の枠組みに従って、自社の強みや弱みを説明することなどしない。その代わり、その事業の歴史的な必然性を訴えるのだ。

 そして、その事業が社会にとってどのような価値があるのかを訴える。このような「歴史的必然性」と「社会的な価値」を訴えることが「共感」を呼ぶのである。これが孫正義のプレゼンテーションが多くの人を動かしてきた理由だ。人は誰もが心のどこかに「現在の社会を少しでも良い方向に変えたい」「自分が歴史の1ページに小さくとも自分の足跡を残したい」という情熱を持っているものだ。孫正義のプレゼンテーションはその小さな情熱の炎を大きく燃え立たせるのだ。

 孫正義のプレゼンテーションは、誰が聞いても内容が理解できる、分かりやすいものである。プレゼンテーションの「メッセージ」は常に明確。そして、そのプレゼンテーションには、孫正義の考える「戦略」が強く反映している。この結果、孫正義のプレゼンテーションの全体を貫くロジックは、常にシンプルかつ骨太だ。

 プレゼンテーションのスライドの1枚1枚は、短いメッセージと図や写真などのビジュアルで構成されている。また、孫正義の語り口も対話をするかのように自然で柔らかい。決してメモを棒読みにするようなスタイルではない。誰も退屈で難解な話を長時間好きこのんで聞き続けることはできないのだ。

 孫正義のようなプレゼンテーションの達人に、すぐになることは難しいかもしれない。しかし、孫正義の行っているプレゼンテーションのコツの1つ1つは難しいものではない。誰もがすぐに実行することができるものも多い。孫正義のプレゼンテーションを意識すれば、誰もが自分のプレゼンテーションを飛躍的にパワフルにすることが可能である。

 それだけでなく、終わった後にはメッセージを共有し合えた喜び、大きな価値を共感し合えた満足が生まれるだろう。こうしたコツを孫正義のプレゼンテーションの実例を交えながら解説していくのが本連載の基となっている書籍『孫正義 奇跡のプレゼン』である。

 『孫正義 奇跡のプレゼン』を活用して、読者の皆さんのプレゼンテーションがそれぞれのビジネスにおいて大きな成果を挙げること、またその結果、世界と日本の未来がより良いものとなることを願いたい。

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