交渉は情報戦――「情報開示」をうまく使い、相手を意のままに動かせプロが教えるビジネス交渉術 第2回

交渉に望む際には、十分な情報を集めておかなければならない。逆に情報を効果的に相手に伝えることで、相手を自分が望む方向に導くこともできるのだ。

» 2014年02月13日 10時00分 公開
[PR/Business Media 誠]
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 どうすれば給与交渉を有利に進められるか――。前回の記事では、交渉の“ゴール”を複数用意すること、交渉における“アメ”と“ムチ”、つまり相手にとってよい話と、脅威になる話を使い分けて交渉を進めることの重要性を述べた。

 とはいえ、交渉前に用意したアメとムチは、自分の想像上のものでしかない。相手が自分をどれだけ重要な人材だと思っているか、どれだけ給与を上げるのが難しいか――こうしたことは上司と話してみて、初めて分かることだ。刻一刻と変化する状況に対応するためには、情報を集めておく必要がある。

交渉前も交渉中も、絶えず情報を取得せよ

 情報を集めるのは交渉の前だけではない。上司とのミーティング中でも、とにかく徹底的に情報を取得し、アメとムチを更新していくことが重要だ。“給与を上げる”という目的を持って交渉に臨む場合、以下の情報は、最低限事前に知っておくべきだろう。

  • 昇給や賞与は、どんな基準で決まるか
  • 標準的な成果を出している人は、どれくらいの昇給があるか
  • 部署に自分を昇給させるだけのお金の余裕があるか
  • 昇給の決定に関わるのは誰か
  • 交渉相手は、給与の決定においてどれだけの権限があるか

 上の3つは、自分自身と会社の現状を知ることで、昇給の可能性がどれくらいあるのか把握するために必要な情報だ。一方、下の2つは、この交渉はどれだけ効果があるかということを知るために必要な情報となる。当たり前だが、自分の評価と給与に強い影響力を持つ人間に訴えた方が話は通りやすい。

 基本的に多くの会社では、人事制度が公表されているはずなので、上の問いに対する答えは大体得られるはずだ。もし分からないことがあれば、その場で質問しよう。とはいえ、質問をしても答えてくれるかどうかは分からないのが実情だ。「総合的に考えて決まることだから、一概に言えないかな」などとはぐらかされる可能性もある。

“得”になる情報を開示し、相手を動かす

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 上司は自分の質問に対して、本当に答えを教えてくれるのか――。これは上司の立場で考えると分かりやすい。その情報を自分に与えたとして、交渉が上司の望む方向に進むか、ということを考えればよいのだ。上司に有利になるようなら(少なくとも不利にならなければ)、情報を自分に教えてくれるだろう。

 逆に考えてみよう。相手にとって得になる情報を与えることで、相手を自分の望むように動かせるのだ。自分と同様に、交渉相手も新しい情報を与えられれば、状況を整理して新しい目標を設定する。例えば、次のような感じだ。

自分:私は次年度、今の仕事に加えて○○の案件をやるつもりです。

上司:(今よりも評価が上がるのは間違いないか。どれくらいになるか……)

自分:ちなみに部署の業績的にどうなんでしょう。給料って上がるんですかね?

 こうすることで、給料が上がる可能性を聞き出しやすくなる。相手に情報を与えることは、相手のアタマを利用することでもあるのだ。情報はそのための強力な武器となる。ひいては、お互いがよりよい結果に行き着くためにも、交渉には情報を開示するスタンスで望むのが大事だ。そして各々の情報を開示する際に「この情報が交渉を不利に(お互いが損になることも含め)しないか?」と自分に問うのがよい。

 十分な準備をして、いざ本番。上司とのミーティングでは、自分が立てた仮説や思い込みを確かめるのだ。ここで非現実的な要求を繰り返してはならない。無駄な時間を使ってしまうし、ミーティングの雰囲気も悪くなる。当初の要求が通らないのであれば、用意した別の目標を要求してみよう。欲張るわけではなく、単なる譲歩を重ねるでもなく、最後まで、お互いにとってよりよい結果を突き詰めるのが“交渉”なのだ。


 いかがでしたか? 西欧人が日本のビジネスパーソンと交渉する際、彼らが最もイライラするのは、情報開示に消極的な点だといいます。出すべき情報すら出さない人が多く、交渉に無駄な時間がかかることが多いようです。交渉術というのは頭で分かっていても、実践ではなかなか上手くいかないもの。実際にトレーニングを行い、練習をしなければ身につきません。記事では書けなかったテクニックもたくさんあるのです。

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提供:スコットワーク株式会社
アイティメディア営業企画/制作:誠 Biz.ID編集部/掲載内容有効期限:2014年5月13日

著者プロフィール:増倉洋

スコットワーク株式会社 代表取締役コンサルタント。英国発、世界34カ国24言語で20万人以上をトレーニングしてきた交渉トレーニングの専門家集団スコットワークの日本における代表。同社初の日本人講師として、2013年より日本語で交渉トレーニングを実施している。

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