上司があなたをお酒に誘って伝えたいと思っている7つのことICHIROYAのブログ

若いころは、とかく何でも知っているような錯覚に陥りがちで、上司からのお酒の誘いも面倒に思えるものだ。しかし、その真意を知れば、誘いに乗りたくなるかもしれない。

» 2014年03月10日 11時00分 公開
[和田一郎,Business Media 誠]

この記事は、ブログ「ICHIROYAのブログ」より転載、編集しています。


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 大学を卒業したころ、生意気盛りだった僕は、世の中のことや人間のことはだいたい分かっているような気になっていた。自己啓発書を読むのも嫌いだったし、教師や親の言うこともきちんと聞こうとはしなかった。

 会社でも上司や先輩たちの酒の誘いが嫌で仕方がなかった。どうせ、つまらない説教をされるか、自慢話を聞かされるか、愚痴を延々と聞かされることになると思っていたからだ。

 しかし、僕はその後、何度も壁にぶちあたり、文字通り、泣きながらさまざまなことを思い知った。

 あのころの僕と同じように、若い人たちの中には、今日も上司から酒に誘われ、「どうやって断ろうか」と困っている人がいることだろう。あるいは、仕方なく付き合って、「何時まで付き合えば人事考課に響かなくなるだろうか」と考えているかもしれない。

 そんなわけで、幾万の上司が若いあなたのためを思い、「伝えておいたらいつか役に立つだろう」と話しているであろう内容のエッセンス、若いころの僕が知らなかった、「人間ってこういうものだったのか!」というものを、まとめてみることにした。おそらくあなたの上司も、こんなことを伝えたくて「帰りに一杯いくか!」と誘ってくれているのだと思う。

ほとんどの人間は基本的に良い動機に基づいて行動する

 世の中には悪いやつもいるし、徹頭徹尾、利己的な人間もいる。だけど、ほとんどの人間は良心に従って判断し、行動している。

 マネージャーになった人が真っ先に学ぶのはこのことだ。部下がサボっているように見えたり、手を抜いているように見えても、マネージャーはすぐには叱責しない。ひょっとしたら、その行動の裏にマネージャーの予想を超える前向きな意図や理由があるかもしれず、早急に判断して叱責すると、良い動機を殺すことになりかねないからだ。

 それが実際に良い動機とサボりごころの両方から起きているなら、良い動機を評価すれば人は良い動機に基づいてさらに行動するようになる。しかし、サボり心を叱責すれば隙を見つけてまたサボろうとするだろう。

 人は基本的に良い動機に基づいて行動する。その前提に立って判断することが、常に最良の結果を生むはずだ。

誰も見ていなければ、99%のひとはサボる

 ある知人がお店をスタッフに任せて、自分はほとんど営業に出ていた。営業時間は夕方6時までで、最後のお客様が帰るのを見届けてからシャッターを下ろすことになる。

 彼が店にいる間は、6時15分〜30分に店を閉めていたが、自分が営業に出はじめてスタッフに店を任せるようになると、シャッターを下ろす時刻がだんだん早くなり、いつの間にか6時ちょうどにシャッターが下りるようになっていった。あるとき5時50分ぐらいに店に帰ってみると、営業時間が6時までであるにもかかわらず、既にその自分の店のシャッターは下りていて、店の前の前に立ちつくしてしまったという。

 今にして思うと申し訳ないことだが、僕もサラリーマン時代には適当に息を抜いていた。でも、それが人間だ。大きな組織を運営する人は、例外中の例外の1%を見つけて、その人を大切なポジションにつけている。

身近な人との人間関係を大切にする

 たいていの人は同僚や直属の上司、部下などとの人間関係の維持に最大の注意力を払っている。

 例えば、お店で一見さんを邪険に扱うことはあっても、ともに働くスタッフにそれはできない。そんなことをすれば人間関係がぎくしゃくして、自分が働きにくくなるからだ。

 そのため、お客様と仲間のどちらかに応えなければならない判断を一瞬で迫られた場合、たいていの人は仲間を優先してしまうものだ。

 マネージャーなら売場の業績や品ぞろえの方針などを最優先にするが、スタッフにとってのその日の最大の関心事は、「今日のお昼は、誰と一緒に行けるかな。それは何時からかな」というようなものであることは覚えておいたほうがいい。

社外のライバルより社内のライバルに勝とうとして行動する

 人間関係には、互いの優劣に関する感情も含まれている。例えば、自分が1つの店を任されているとする。近所にあって、自分の店に多大な影響を与えているライバル会社の店Aと、商圏は別だが、自社の同期が任されている店Bとでは、どちらの売上が気になるだろうか。

 それは間違いなくBなのだ。自分の店がAに負けても会社全体は簡単に揺るがない。しかし、Bに負けると、“自分の”出世に直接影響する。

 僕が社会に出て驚いたことは、それなりの地位にいる人であっても、ライバル店の成績より、自社内の競争相手の動向に関心を持っており、それを隠しもしないということだった。

変化を嫌うこと岩のごとしである

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 とにかく、みんな変化を嫌う。僕も嫌いだ。Windowsが新しくなるたびに、使い勝手を覚えるまでが面倒で、本当に嫌になる。

 どれほど新しいバージョンが便利そうでも、行動の手順を変えるということは、とても心理的な負担が大きい。それと同じで、誰かに命令でもされない限り、手順を変えれば効率的になるということが分かっていても、人はやりかたを変えず、以前と同じやりかたをする。

 それはまるで、岩のごときだ。相手のことを岩と思ってことに当たらないと、人の行動を変えることはできない。

人は感情に基づいて判断し、奇妙な理屈の構造物を建てる

 人間というものは、実に論理的でなく、感情で判断する。そして、その判断の上に論理を組み立てて自分を正当化する。

 その論理は間違った土台の上に高く精緻に建てられた建築物のようで、外から見れば滑稽なのだが、本人にはそれが分からない。

 会社に入りたてのころ、僕は「掃除用品」の品ぞろえを任された。自分なりに品ぞろえを考えて売場を作ったら、上司が「ブラインドクリーナー」がないと言い出した。数枚のブラインドを挟んでいっぺんに拭けるという輸入の便利グッズだった。その時の僕は、「そんな高価なものを使うぐらいなら、軍手の方がずっと便利だと思うので、そろえる必要はない」と反論した。

 今にして思えば、何と恥ずかしいことか。いくら軍手の方が便利でも、掃除をおしゃれに楽しみたいお客様には外国の香りのする「ブラインドクリーナー」の方が楽しいことぐらい想像できそうなものなのに!

 確か、僕はその時、「軍手で充分理論」を頑強に主張して、自分では注文書を切らなかった。つくづく人間とは、感情で判断するものだというエピソードである。

ほんとうに伝えるべきことは相手に伝わらない

 その人のためになると思い、本当に伝えたいと思うことは、なかなか伝わらないものだ。

 多くの人は自分の知っている範囲のことで組み立てた信念を持っている。その信念に反することは、たいてい理解されない。だから、伝えることができない。

 それでも伝えたいときはどうしたらいいのだろうか。伝えるコツや方法があるのかもしれないが、たぶん、こればかりは自分で学ぶしかなく、こちらはその契機を提供することしかできないのだろう。

 もっとも、自分が誰かに伝えたいこが伝わらないと思っているように、誰かが、僕やあなたのことを心配して、「こんなこと伝えたいのに、伝わらない」と思っているのだろう。悩みはつきない。

著者プロフィール:和田一郎

アンティーク・リサイクル着物を国内外へ販売する「ICHIROYA」代表。昭和34年生まれ。京都大学水産学科卒業後、大手百貨店に入社。家庭用品、販売促進部など。19年勤めたのち、2001年に自主退職して起業。現在に至る。趣味はブログ執筆。


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