子育て環境は、男性の“働き方”から変えていこうRe:Work !・最終回(2/3 ページ)

» 2014年03月18日 11時00分 公開
[三河賢文,Business Media 誠]

子育てに参加できないサラリーマン

 私が独立したとき、ちょうど妻のお腹には2人目の子がいました。この話をすると、半分以上の方からこんな風に言われます。

 「小さな子どもがいて、よく独立なんかできたな」

 つまり、独立することによる“不安定性”を懸念した声なのでしょう。確かに、その懸念は理解できます。しかし会社員でいることが、本当に子育てにおいて良いことなのか? 安定して収入をもらえる代わりに、子どもとの時間を持てない。家事や育児を手伝うこともできず、少し大げさですが、まるで夫は仕事だけが家庭内の役割であることが、私には望むべき姿とは思えませんでした。

 多くの会社員は、定時+残業で働いています。朝7〜8時ごろには家を出て、帰宅するのは早くても19〜20時ごろ。飲み会などに参加すれば、帰宅が深夜に及ぶこともあるでしょう。有給は10〜15日程度ありますが、いつでも取得できるわけではありません。「有給は、毎年全部消化する!」という人もいますが、それは非常にまれなケース。むしろ土日に出勤するなど、本来ならば得られる(ハズだった)時間も仕事に費やされているのが実態でしょう。

 たとえ早く帰宅できても、仕事に疲れて家事・育児の手伝いなどできず、土日・祝日はできるだけ寝ていたい……。これが多くのサラリーマンの本音かもしれません。奥さんもそれが分かっているからこそ、強く「手伝って」とは言えないはず。“会社”という組織に属する以上、残念ながらなかなか抜け出すことの難しい実態ではないでしょうか。

 「俺、子育てには参加したいんだ!」

 そう思ったとしても、実際にどこまで子育てに参加できるのか。最近は男性でも育休を取得したという声が聞こえますが、まだまだ超少数派。しかも育休というのは、そんなに長く取得はできない。厚生労働省では『育児休業給付』で賃金の50%を支給(条件あり)していますが、それも原則は子どもが1歳になるまで。しかし収入を考えると、実際に1年丸々休暇を取るのは、なかなか現実的ではないでしょう。まして育休を取得するタイミングというのは、まさに「これから、もっとお金が必要になる」時なのですから。

 そして育児というものは、子どもが1歳になれば終わるものでもありません。1歳の子どもはまだオムツも取れていないし、食事だって自分では食べられない。小さな子どもは病気にもなりやすいですし、決して手が離れるわけではないのです。ましてそのタイミングで、都合よく保育園に預けられるとも限らない。そうすれば、恐らく多くの家庭において「女性が仕事をせず、育児を続ける」という選択になるのでしょう。

 こうしたさまざまな要因から、現在サラリーマンが育児に参加できる環境は、とにかく不十分なのです。

環境によって出産のハードルは上がる

 出産ばかりは、男性が代わりに……とはいきません。産前産後の休暇は、どんな人でも必要です。しかし男性に何もできないのかと言われれば、そうではありません。

 「出産が近くなると、実家に帰る」

 という女性は多いでしょう。このことからは、出産がとても大変であり、自宅では誰もサポートしてくれないという実態が分かります。しかし私としては、本来なら夫婦で協力し、出産という一大イベントを乗り切ってほしいと思います。

 人によっては、近くに頼れる親族がいない人もいるでしょう。私は「出産立ち会い推奨派」ですが、遠い親族の元で出産するとなれば、それは残念ながらかないません。計画出産じゃない限り、いつ産まれるかは神のみぞ知る……です。

 詳しい事情は割愛しますが、我が家の場合は後者でした。近くに頼れる親族はおらず、自分たちで支え合いながら出産を迎えるしかない状況。これは長男も次男も同じですが、長男のときはとにかく全てが初めてで不安ですし、次男のときには当時3歳の長男がいます。

 長男が産まれたときは、ちょうど出勤前のタイミングで妻が産気づいたので、婦人科へ連れて行ってから出社。出社後すぐに上司へ状況を説明し、午前中で仕事を処理&引き継ぎして、夕方に産婦人科へ到着。その数時間後、無事に私も立ち会いのもとで出産を迎えられました。このときは、職場からの理解があったことを本当にうれしく思います。

 大変だったのは、次男の出産時です。正直、「もし次男が産まれたときに、会社員だったら?」と聞かれると、どうしていたのか検討もつきません。

 既に独立しており、産婦人科へはいつも車で送っていました。長男は保育園や幼稚園に預けていなかったので、常に一緒です。診察を受けているとき、長男はいつも私が見ています。次男が産まれたのは夜中。陣痛が始まったと起こされた私は、長男と妻を連れて産婦人科へ。程なくして無事に次男が産まれましたが、ここからが大変です。

 出産後、妻と次男はしばらく病院で過ごすことになります。これは、誰でも(どんな病院でも)同じでしょう。そのため、どこにも預けていない長男は、その間ずっと私が見ていなければいけないのです。長男は当時3歳ですから、留守番するのも最長で1時間が限度。つまり実質的に、仕事だろうと何だろうと私は外出できないわけです。

 会社員であれば、育児休暇もしくは有給消化で乗り切るのでしょうか。しかし緊急時であろうと、家を空けることができない状況です。出産からバタバタとした流れの中で、一切何も起きないように引き継ぎをしなければいけない。これは、なかなか厳しいのではないでしょうか。それでも何とか回っていくのが会社ですが、2人目の出産は1人目とは違った大変さがあるのです。

 このように、自分の置かれている家庭環境あるいは親族を含めた周囲の環境によって、出産というものには大小さまざまなハードルが現れます。「いつも通りの生活」で乗りきれるほど、甘くはないかもしれません。

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