コミュニケーションには常に「相手」がいることを心強く思おう「聴き方・話し方」のコツ(1/2 ページ)

コミュニケーションとは、やりとりであり、常に「相手」がいることはとても心強い事実です。

» 2014年03月20日 11時00分 公開
[水島広子,Business Media 誠]

集中連載『「聴き方・話し方」のコツ』について

 本連載は、2014年1月25日に発売した水島広子著『対人関係療法のプロが教える 誰と一緒でも疲れない「聴き方・話し方」のコツ』(日本実業出版社刊)から一部抜粋、編集しています。

 「コミュニケーション上手」というと、場を盛り上げて輪の中心になれるような人、と思いがちです。しかし、コミュニケーションとは、本来「目的に応じて相手とやりとりすること」。

 そのため、「盛り上げ上手=コミュニケーション上手」と考えていては、いつまで経っても本当のコミュニケーション力は磨かれません。本書では、どんな質問がよいのか、どういうリアクションがよいのか、というスキルの話ではなく、安心して心を開ける環境をつくる方法などの「コミュニケーション上手」の本質を磨くコツを紹介します。


 コミュニーションにおいて、とても重要な視点があります。それは、「相手という存在」がいる、ということ。コミュニケーションはやりとりであり、常に「相手」がいる、というのは、実はとても心強い事実です。本当の意味で孤独になることはないのです。

 コミュニケーションの悩みでよく聞かれるのが、「相手からどう思われるだろう」という性質のものです。別にこちらは舞台の上でワンマンショーをしているわけではなく、「やりとり」をしているのだ、ということに思い至れば、仮に緊張したとしても、「すみません、緊張しちゃって」の一言で、場の雰囲気が緩んで明るくなるでしょうし、相手からもねぎらいの一言があって、人間同士のやりとりが始まるでしょう。

 相手を「自分に評価を下してくる存在」から、「よいコミュニケーションができるように、自分を助けてくれる存在」に変えることができると、ぐっと「話す力」が上がります。

コミュニケーションの悩み(1)

相手からよく声が小さいと言われる。努力しているつもりだが、なかなか直らない。

 意識すれば大きな声が出せるけれども小さくなりがち、というケースであれば、まさに相手の力を借りられる状況です。今のままだと、相手は「声が小さい」と評価を下してくるだけの存在、そして自分は「声を大きくしなければ」というプレッシャーを感じているだけの存在。両者の間には人間らしい交流がありません。

 そんなときは、最初に「夢中になって話していると声が小さくなってしまうクセがあるみたいなので、聴きづらいときは言ってください」と一言断ってから話し始めるのも1つの手でしょう。自分側には声についてのハンディがあるので助けてほしい、ということを初めから言っておくのです。

 こんなやりとりがあれば、「努力しているつもりだが、なかなか直らない」という自分だけの世界から、相手に助けてもらえる世界へと移行できると思います。「あれ、また小さくなってきた」などと笑いすら生まれるかもしれません。

 こうやって自分側のハンディを最初に打ち明けておくことは、相手にとっても親切なことだと言えます。声が小さくてよく聞こえない、というとき、「聞こえませーん」とすぐに指摘できる人もいれば、遠慮してしまう人もいます。遠慮してしまう人であっても、あらかじめ「聴きづらいときは言ってください」と言われていれば、指摘してよいのだな、と思えるので、「すみません、やっぱりちょっと聴きづらいです」と安心して伝えることができるでしょう。

「自分がうまく話せるか」よりも「相手にちゃんと伝わるか」

 声の大小はもちろんもともとの声質や肺活量などが関係するのですが、「相手に伝えたい」「みんなに伝えたい」という意欲や迫力も関連するものです。

 「自分はうまくしゃべれるだろうか」「話す内容はこれでよいのだろうか」などと、くよくよと自分のことばかり考えていると、どうしても自分の世界に入ってしまって、「声が小さい」と言われる、といった傾向もあるようです。「自分がうまく話せるか」よりも、「相手にちゃんと伝わるか」を意識することがコミュニケーションを楽に、そして効果的にします。

 実は、これは、あらゆるコミュニケーションについて言えるコツです。スピーチなど、集団を相手にしたコミュニケーションにおいても一番のコツが、「自分がうまく話せるか」ではなく「相手にちゃんと伝わるか」について考えることなのです。

 「相手に伝えたい」と思えば、自ずと声も大きくなるでしょう。これは、「うまく話せるかどうか自信がない」という無力な境地から、「相手にとってより聴きやすい形にしよう」という力強い境地へと、180度の転換をすることなのです。「点数を付けられる側」から、「相手のために主体的に取り組む側」への転換です。

コミュニケーションの悩み(2)

話が長いと言われる。自分ではそんなつもりはないし、直そうと意識しているがうまくいかない。どうすれば直せるのだろうか?

 これも、相手に助けてもらうべき状況と言えるでしょう。自分に対して「話が長い」と言う人がいたら、「例えばどんなふうに簡潔にできるのでしょうか」「ぜひ改善したいので、どの部分を無駄と感じられたか、教えていただけますか」などと聞いてみるとよいと思います。

 あるいは、自分では話が長いと思っていない、つまり、すべてが伝える必要のあることだと思っているのであれば、「話が長いと思われるかもしれませんが、どうしても分かっていただきたいことなので」などと前置きして話し始めるのも1つの方法です。本人が分かってやっている、と知ることは、聴き手から不要な違和感をなくし、安心させるものです。「一体この人はどういうつもりなのだろう?」という思いこそが、不快感につながるからです。

 話の長さではなく構造に注目するのも手です。一般に、「話が長い」といわれる人の多くが、メリハリのない話し方をしたり、脇道にそれる話し方をしたりしているもの。聴いている相手は、「この話はいつまで続くのだろうか」「この話はどこに向かうのだろうか」と不安や苛立ちを感じてしまいます。

 相手への親切としては、まず結論を話してから、その根拠を説明していく、というやり方がよいでしょう。結論が見えていれば相手は安心しますし、話が長い、脇道にそれた、と感じたら「もう言いたいことは分かったから」と打ち切る自由を相手に与える、ということにもなります。

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