iPhoneを持って日帰り出張!iPhone買っちゃった!?(1/2 ページ)

iPhone初心者の伊達浩志は、自称“iPhoneマスター”の藤堂と日帰り出張に行くことになった。電車の乗り換えや名刺交換後の管理など、iPhoneがあればできることはどこまである?

» 2014年03月24日 11時00分 公開
[美崎栄一郎,Business Media 誠]

集中連載「iPhone買っちゃった!?」について

 本連載は2013年10月15日に発売した『iPhone買っちゃった!? けど、使いこなせてないあなたへ』(ソシム刊)から一部抜粋しています。

 iPhone買っちゃった!? でも……。

  • メールとWebくらいしか使っていない
  • もっと、自分に合ったアプリを知りたい
  • マニュアル本は読みたくない

 そんな方に。

 「読むだけ」で、iPhoneを活用できる本ができました。ビジネスやプライベートで、この本に載っている「あのシーンのあの使い方をしてみよう」と思わせる新提案です。

 2000種類以上のアプリを試し、iPhoneやiPadの活用術についての講演、執筆などにもひっぱりだこの著者が、具体的なビジネスシーン、生活シーンでのiPhoneの使い方を、3人のビジネスパーソンを中心とする小説で具体的に紹介。iPhoneの使い方だけでなく、ビジネスにおける発想法や仕事術も織り込んだ1冊です。


 10時2分、待ち合わせの会社のロビー。同期の伊達浩志は来ない。藤堂はスケジュール管理アプリ「miCal」の「待ち合わせ。伊達」をタップした。メモ欄に、伊達浩志の勤務先の番号が書かれている。タップすると電話がかかる。部内の内線で、新人の女の子が出た。様子を聞くと、案の定、上司に捕まっているらしい。藤堂の名前を伝えて、上司に分かるように呼び出してもらうと、伊達浩志が電話口に出た。

 「助かった。解放された。今、ロビーに向かう」

 ったく。あの上司、いつもこのパターンだよな。人の予定を気にせず、確認ばかりしやがって。トンカツ食えなくなるじゃねえか。藤堂は電話を切りながら、時計の時刻を確認した。

 10時29分上野発の電車には間に合いそうだな。伊達が階段から降りてくるのが見えたので、ロビーを後にして、上野駅に向かった。10時10分、上野駅までは徒歩5分くらいだから、大丈夫だろう。

 上野駅から電車に乗ると、伊達浩志は「駅探 乗換案内」を立ち上げて、フリック操作で上野から東武宇都宮までを検索しようとしていた。「上野」と入力して、ちょっと横を見ると、隣にいる藤堂はもう検索結果を表示している。

「駅探 乗換案内」

電車の乗換をスマートにするために細かいギミックが楽しいアプリ。iPhoneを振るとキャンセル、iPhoneを横に傾けると路線表示になったりとダイナミックかつ直感的なインタフェースが特徴。連携アプリも多い。



「駅探 乗換案内」スクリーンショット(App Storeより)

 「はや! 同じアプリだよね?」

 「俺の場合は有料会員だからな。検索結果を保存できる」

 「あ、昨日その表示が出てきて、年間2000円くらいしたからやめたんだ」

 「2000円だろ、自分の時給いくらだと思ってるんだ? 2秒で終わる作業に数分かけていたら、すぐに数千円になるぞ。何回も検索するだろう、駅名は」

 「確かに……」

 そうは言ったものの、伊達浩志は、有料会員への登録はまだためらっていた。2000円あったら、何回牛丼が食べられるんだろう、なんて余計なことを考えている間に電車はけっこう進んでいた。途中で乗り換えがあったはずだが、とiPhoneの画面を見るが、そもそも今いる駅がどこか分からない。藤堂も同じことを感じたのか、iPhoneを立ち上げ、「駅探 乗換案内」の検索画面を表示したまま、iPhoneを縦から横に傾けた。すると、途中駅がすべて表示されている。

 「わー、すごい。俺もやってみよう」

 すると、有料会員にならないとこの機能は使えないというコメントが表示された。

 「ははは、うまくできてるだろう。俺もこの機能が使いたくて有料会員になったんだ、実は」

 iPhoneには、ジャイロセンサーと加速度センサーという端末の傾きが把握できるセンサーが内蔵されている。もともとは、iPadのHDDの破損防止のために使われた技術だが、今はそのおかげで操作性がより直感的になっている。

 藤堂は、iPhoneを縦に戻し、画面の端にある矢印ボタンを押した。すると、検索結果をメールで送るための表示が現れ、あっという間に宛先を2つ入れると、その場でメールを送信した。iPhone初心者の伊達には、藤堂が何のために何をどうやっているのか全然分からなかった。

 「何やったんだ?」

 「それは明日のお楽しみ」

 そう言って、藤堂は今度はネタをばらしてくれなかった。東武宇都宮に着くまでの間、伊達浩志は一生懸命、「駅探 乗換案内」の有料会員になるための手続きをしたのだった。

 「おい、着いたぞ、伊達」

 東武宇都宮駅で降りると、時間は12時30分だった。

 「藤堂、今日は、どこで食うんだ? もう、リサーチ済みだよね」

 実は、伊達は藤堂と同行する営業先の案件は大体2時スタートにしている。最初は偶然、取引先の指定の時間だったのだが、藤堂と行くと、現地に1時間くらい早く着いて、ヤツがリサーチしたその土地の美味しい食べ物にありつけるということが分かったのだ。

 「今日は、『こだわりトンカツねぼけ』だ」

 東武百貨店の中に入っているそのお店は、塩で食べることを推奨しているこだわりのトンカツ屋だった。本当にうまいトンカツは、ソースではなく、塩やレモンだけで食べてほしいという店主のこだわりらしい。もちろん、希望者のためにソースも置いてある。

 「これ、めちゃうまい!!」

 伊達浩志は、絶叫した。

 「だろ? 今日の俺の仕事はこれで終わり」

 藤堂は自慢げに答えていたが、トンカツの旨さに、頬はゆるんでいた。食事を終えて満足した2人は、タクシーで訪問先の株式会社宇都宮ゴムに向かう。名刺交換をして技術説明に入ると、藤堂のプレゼンはいつもながら極めて分かりやすい。伊達と一緒に行ったときの成約率は、7割以上だ。

 藤堂には入らないが、伊達には少しインセンティブ的な報酬が入る。その分、藤堂のほうが基本給は高いから、結局もらっている金額は大して変わらないんじゃないかと思う。

 仕事を与えていれば、勝手にこだわって好きなだけ働く技術職と、成果がないと燃えない営業職。経営者はうまくニンジンを使い分けているのだ。

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